のれん費用化の国際的な会計処理が見直される?

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※画像はイメージです

こんにちは。ビズサプリの花房です。先日日経新聞のニュースで、「国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことが明らかになった。」との記事がありました。(今後)「費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。」とのことで、今までは減損一辺倒であったIFRSにおける、のれんの会計処理が、規則償却を基本とする日本基準に近づく可能性が出てきました。

1.見直しの背景

のれんの償却について見直しの議論が深まった背景としては、最近の大型M&Aの増加に伴い、B/Sでののれん残高が積み上がって来ている、ということは、大きな理由の1つだと思います。同記事には、欧州の主要600社ののれん残高は240兆円、アメリカは主要500社で340兆円ののれんが積み上がっているようで、対して日本においては、国内IFRS導入企業(約160社)で約14兆円、とのことです。

日本の企業でもIFRS導入企業の方がのれんは積みあがる傾向にあり、TOP3として、ソフトバンクで4.3兆円、JTは1.9兆円、武田薬品工業1兆円の順となっています(武田については、今後シャイアーの買収が成功すれば、3兆円規模ののれんが加わると言われています)。

M&Aが盛んな企業において、特に大型買収案件を数多く成功させている会社は、場合によってはのれんが自己資本と同等かそれを超える場合もあり、仮に減損によってのれんが一気にゼロになってしまうようなことがあれば、債務超過になってしまいかねません。日本における最近の話題ですと、ビズサプリのメルマガでも何回か取り上げましたが、東芝がウエスチングハウスの不正を発端とする多額の減損で、一時債務超過に陥り、上場廃止になるかどうかの攻防がありました(結果的に債務超過は解消され、上場も維持されています)。

のれんの費用化を減損だけに依拠すると、投資先が順調な時は基本的に問題になりませんが、いざ経営が傾くと、巨額の減損リスクを負うハメになるという意味では、一種の「爆弾」を抱えていると言っても言い過ぎではないと思います。のれんが積み上がっている状況は、ある意味爆弾をたくさん抱えることになるので、のれんの会計処理ルールを「減損」から「償却」ベースに変えることで、のれんの一方的な増加を抑え、企業のバランスシートを健全に維持して行くことに繋がります。

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