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企業法務弁護士が語る「法務デュー・ディリジェンスの限界」
大企業が買収した子会社で何らかの不祥事が起きたことが報道されると、法務デュー・ディリジェンス(買収監査)ではいったい何を見ていたのかと批判されることがある。
不正・不祥事については2018年もずいぶん多くの報道が行われました。昨年から引き続きモノづくりの会社の品質不正が次々明らかになりました。これらの改ざん行為はあまり罪の意識がないまま長年業務として淡々と行われていたことがわかっています。
「顧客と約束したスペック」といった契約文書で交わした「ルール」が建前と捉えられ、前例や口頭での引継ぎが重視されるといった企業文化であったということが推測されます。
また、印象的なものとしては「日本大学のアメフト問題」から端を発したアマチュアスポーツ界のハラスメント問題が一気に表面化しました。
私が子どもの頃(数十年前の話ですが、、、)のスポ根漫画は、「ハラスメント」に耐えながら逆境を乗り越えていくこと自体がメインストーリーでした。ただ、今はそのような指導方法は言うまでもなくNGです。前回のコラムで書いた「医学部の入試問題」も「品質不正」も「スポーツ界のハラスメント問題」も、長年「こういうものだ」と思われていた組織内部での常識が、世の中の常識と大きくずれてしまっていることで不正・不祥事が表面化してきたという共通の特徴があるように思います。
そして、なんといっても年の最後に来た日産自動車のゴーン氏問題です。
ゴーン氏といえば世界的にも著名な名経営者であり、報酬や私的に使用した(と言われている)金額も使用使途も、少なくともわが国においては桁違いの金額や常識外れの使用使途であるため、どうしてもセンセーショナルな報道になりがちです。新聞報道などでは、「今回の件を他山の石としすべし」といった記述もありますが、「日産のゴーンさんだからこのような状況になっていた」という要素も多分にあるため「他山の石」とするのはなかなか困難に思います。
今日は、もう少し一般化した「経営者が行う不正」という観点で考えてみたいと思います。
一般的には不正の手口は、下記の3つに分類できます。
(日本公認不正検査士協会「不正検査士マニュアル」より)
1.賄賂・談合のような法律違反
2.資産の不正流用
3.報告(財務・非財務)不正
ゴーン氏逮捕の夜に開かれた西川社長の記者会見では、ゴーン氏の行った不正は、上記のうち「2.資産の不正流用」と「3.有価証券報告書の虚偽記載」だということが明言されていました。
「2.資産の不正流用」には具体的には下記のような手口があります。
● 実態のない業務委託契約を締結し、親族の会社に振り込む
● 勤務実態のない親族等に給与を振り込む
● 私用の費用を会社に請求し支払いを行う
● 会社の情報資産(営業秘密や顧客情報、特許情報)等を横流しする
学歴:大阪大学経済学部卒
職歴:1996年10月監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入所。会計監査部門に9年、コンサルティング部門9年間在籍。会計監査では、製造業、流通業、鉄道業、電力業、証券業、放送業、ホテル業等多くの業種、上場支援から大手企業まで幅広い規模の会社の会計監査を担当 2005年12月にコンサルティング部門に異動。会計監査での知見を活かして、内部統制報告制度対応のトーマツアプローチの主要開発メンバーとなる。その後、内部統制報告制度導入、IFRS導入、コンプライアンス体制構築、内部監査体制構築、決算早期化、決算体制構築など数多くのプロジェクトでプロジェクトリーダーとして、コンサルティングを実施した。2015年5月独立して、株式会社エスプラスを設立(代表取締役)と共に、株式会社ビズサプリのパートナーとなる。プライベートでは一児の母
主な著書:内部監査実務ハンドブック(中央経済社)・不正リスク対応実践ガイド(中央経済社)・内部統制報告制度実務詳解(商事法務)
大企業が買収した子会社で何らかの不祥事が起きたことが報道されると、法務デュー・ディリジェンス(買収監査)ではいったい何を見ていたのかと批判されることがある。