【会計コラム】今後の外食業界のあり方

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皆様、こんにちは。ビズサプリの花房です。今回は、今後の外食業界のあり方をテーマに取り上げてみます。

1.外食業界の概要

一般社団法人日本フードサービス協会発表の調査結果によると、2017年度の国内の外食産業の市場規模は25.6兆円で、この中には給食やバーなども入っており、飲食店と喫茶店、居酒屋、料亭に限るとその規模はおよそ16.6兆円と推計されています。詳細ジャンルがあるものは限られますが、うち寿司店は1.5兆円と、そば・うどん店の約1.3兆円と並び、居酒屋の1兆円より大きな市場規模となっています(なお、当該調査データで一番大きいのは、「食堂・レストラン」の10兆円です)。

外食産業はそれなりの大きな市場ですが、特別な技術が必要な業界ではないため、業態の模倣もし易く、参入障壁の低い業界です。そのため、売上に対して食材費等の原価が3割、人件費が3割、家賃や減価償却費等の設備費、水道光熱費等のその他のコストが3割で、それらを差引いた営業利益率が10%出ればまずまず、の業種です。上場企業でも営業利益率が10%を超えている企業は数えるほどしかありません。

営業利益率が高い企業で有名なのは、高級レストランのひらまつで、かつて営業利益率20%超(2015年3月期:23.9%)と上場外食企業では1位を誇っていましたが、最近ではホテル事業参入に伴って新規出店費用やメディア経費等の積極投資がかさみ、営業利益率は10%台前半(2018年3月期:13.1%)となっています(それでも10%を超えている上場企業は数えるほどしかありませんので、優良の部類に入ります)。ひらまつの営業利益率が高いのは、高級レストランであり客単価が高く、相対的に食材費、人件費等の原価割合が低いこと、婚礼売上が多く、これは貸切りでコストの無駄がなく、効率性が高いことが考えられます。

ひらまつは高価格帯で婚礼需要にも応えられることから、外食産業の中では比較的参入障壁の高いニッチな分野と言え、高収益を達成できていますが、大多数の外食企業の客単価は低く、競争が激しいため、営業利益率は良くて1桁台前半か、ちょっとマイナスの外的要因が発生すると、すぐ赤字に転じてしまう企業も少なくありません。

また外食事業は給与水準が低い業界としても知られていますが、実際に厚生労働省の開示している労働統計要覧で、2017年度の「業別所定内給与額」を見てみると、全16分類のうち、『宿泊業,飲食サービス業』の現金給与額(年齢計)は最下位の月額265千円、でした(16分類の平均は月額346千円、一番高額は『電気・ガス・熱供給・水道業』の月額467千円と、飲食の1.8倍になります)。このように、給与水準が低いにもかかわらず、人件費が売上高の3割程度を占め、営業益率は1桁台、というのが、外食事業の特徴になります。

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