「親子上場の問題(その2)」

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2. ルノーと日産、シャープと鴻海

 皆さんもご存知の通り、フランスのルノーと日産自動車は資本関係を結んでいます。ルノーは日産に43.4%出資し、日産はルノーに15%出資しています。日産がルノーに出資している15%については、ルノーが日産の大株主(40%超)であるため、フランスの法令によって議決権が付与されていません。

 長きにわたる販売不振が原因で1999年に日産はルノー傘下に入りました。ルノーはそこに資金や人材を投入し、大胆なリストラと車種入れ替えを行って日産を復活させていきました。

 日産は資本的にはルノーの傘下ですが、両者はブランドとしては統合していません。また、今の日産であればルノーがいなくてもサプライチェーンはまわります。その意味では、ルノー・日産は比較的問題が少ない親子上場にも思えます。

 しかしながら、実はルノーの株式の15%はフランス政府が所有しています。そしてフランスでは、株式を2年以上保有する株主に倍の議決権を与える「フロランジュ法」が成立しました。フランス政府の持分が15%の倍で30%となると、ルノーの経営にとってこれは大きな影響力となります。

 フランス政府は、移民や支持率の問題もあって雇用はとても敏感です。ルノーの経営にフランス政府の思惑が反映されると、雇用の調整弁とされる可能性もあります。それではルノーは上場企業として投資家に向き合えません。ルノーの影響を強く受ける日産も同様です。

 こうしたことから、ルノーは日産への出資比率を下げ、日産のルノーへの出資に議決権を付与してフランス政府に対抗するなど検討している模様です。フランス政府に対抗する点でルノーと日産の利害は一致しています。

 ルノーと日産、そしてフランス政府の問題は、親子上場の問題が2段階積み重なった珍しいケースといえます。

 鴻海によるシャープへの出資のニュースも近年マスコミをにぎわせていますが、構図としてはルノー・日産と非常に似ています。鴻海はシャープの株式の66%を取得し子会社化しますが、シャープの上場は維持します。シャープの経営トップは鴻海から出すものの、鴻海とシャープはそれぞれ独立の経営主体であり続けるともコメントされています。

 一連の構図はルノー・日産とそっくりですが、鴻海はEMS(電子機器の受託生産)の大手なのに対しシャープは高度な技術による差別化を得意とするなど、ビジネスモデルがかなり違います。

 鴻海とシャープの利益を上手く切り分けられるかは今後の提携スタイルによりますが、少なくともシャープとしては利益相反があれば対抗できる仕組みにしていかなければなりません。それはすなわち、上場子会社としてのガバナンスに他なりません。

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