トップ > 調べる・学ぶ > M&A実務 > 会計コラム >「親子上場の問題(その2)」

「親子上場の問題(その2)」

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt

3. やはりガバナンスの問題に

 日本は安定株主による経営の安定を歓迎してきました。その結果、親子上場が例外的に多い国となっています。

 しかしながら、外国人投資家による東証の売買シェアは6割、株式の所有比率でも3割に達しています。海外マネーは今や日本の証券市場に不可欠で、日本は別という理屈は通りにくくなっています。

 良い親を持つことは子供にとってメリットがあります。経営の安定、強力な業務パートナー、信用力の強化など。しかしながら親も上場企業として利益を追求することから、潜在的に利益相反があることは避けられません。それでも上場するなら、親が子供をいじめない仕組みにしなければなりません。

 このためには、かなり高度なガバナンスが必要になります。機関設計の工夫だけでは難しく、株主との契約や、役員人事における歯止めのルール、少数株主の利益をモニターする外部者を置くなどしなければいけないでしょう。

 シャープと鴻海のケースでも、シャープが上場を維持する以上、鴻海に利益を吸い取られない仕組みであることを具体的に説明する必要があると思います。

 なお、日本で上場していない親会社の場合、日本では開示情報が得にくいという問題もあります。完全に親会社である場合は「親会社等状況報告書」という書類を開示することになりますが、持分が過半数に至っていないルノーの場合は開示義務がないなど、公的な開示制度だけで説明を尽くすのは難しいと言えます。

 今の上場審査では余程の理由が無ければ親子上場は否定されてしまいます。子会社の利益を保証するガバナンスの組み方は簡単ではありません。それでも親子上場のメリットを「いいとこどり」してきた日本が、工夫をこらしたガバナンスを編み出していけば、日本のガバナンスも次のステージに上がって行くのではないかと思います。

文:株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.027 2016.04.27)より転載

親子上場の問題(その1)を読む

NEXT STORY

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5