アシックスが北米市場での巻き返しに向け、新たなM&Aを繰り出した。カナダの新興企業、ファストノースコーポレーション(オンタリオ州)からランニングレース登録サイト事業を約30億円で買収することを決めた。

前期(2018年12月期)は過去に買収した海外2子会社ののれん減損や国内外の不採算店舗閉鎖などで20年ぶりの最終赤字(203億円)に沈んだアシックス。経営改革の途上にあるが、足元の2019年12月期は最終黒字に戻し、本業のもうけを示す営業利益も5年ぶりの増加を見込む。

2020年の東京五輪・パラリンピックを追い風として、成長軌道への復帰を確かなものにできるか。

2020年東京五輪・パラリンピック…アシックスはスポンサー最高位の「ゴールドパートナー」を務める

北米3位のレース登録サイト「レースロースター」買収

アシックスは10月31日、ファストノースコーポレーションが「Race Roster(レースロースター)」の名称で展開するレース登録サイトを買収すると発表した。ファストノースは大小さまざまな規模のレースを年間5000件取り扱い、登録するランナー数は米国を中心に約130万人。レース登録サイトとして北米第3位という。

買収の狙いは女性や若いランナー層との直接的な接点の獲得。サイト登録者のうち半数以上が女性で、16~34歳の若いランナーが全体の3割強。レースの規模では10キロメートル以下のレースが7割を占めている。アシックスは北米市場において、こうしたランナー層へのアシックスブランドの訴求を課題としていた。

買収対象事業の売上高は約6億円。これに対して買収金額は5倍の約30億円に上り、新規顧客層の掘り起こしや既存事業との相乗効果などへの期待の大きさがうかがえる。11月中に買収完了を予定している。

「デジタル」によるランナーとの接点拡大に弾み

北米攻略のうえで重要キーワードの一つが「デジタル」。Eコマース(電子商取引)による販売だけでなく、ネット上での商品提案や情報・サービスの提供を通じてブランド価値の向上を目指す取り組みだ。

デジタル分野では布石として2016年、スマートフォン向け運動記録アプリ「Runkeeper(ランキーパー)」を運営する米フィットネスキーパー(現アシックスデジタル、ボストン)を買収した。買収金額は約102億円。このアプリを組み込めば、ランニング、ウォーキング、サイクリングなどの運動データを蓄積でき、利用者は健康管理や運動の計画づくりに役立てられる。買収後3年で、会員数は1000万人以上増え、4500万人に上るという。

こうした膨大な会員データや、アシックスが独自展開する足形計測アプリ「Mobile Foot ID」、トレーニングメニューアプリ「ASICS Studio」といったサービスを組み合わせ、ユーザー個々の足形に合った商品やトレーニング頻度に応じた商品提案につなげている。

今回の「Race Roster」事業の買収も、ランナーとの接点拡大に向けたデジタル戦略に沿った一手といえる。

では、本丸と位置づける北米事業の現状はどうか。