完全自前主義から海外企業とのM&Aへ転換

とはいえ、縮小が確実な日本市場にこだわるわけにはいかない。そこで鹿島は海外戦略を大転換する。完全自前主義から脱却し、海外企業のM&Aへ本格的に乗り出したのだ。鹿島は2015年にオーストラリアのメルボルンに同国事業の統括法人である鹿島オーストラリア社を設立する。

鹿島はオーストラリアでも1980年代までは自前で建設事業を展開していたが、2010年代にほとんど受注はなくなっていた。なぜ、鹿島にとって「終わった国」であるオーストラリアに現地法人を設立したのか。実は同社は自前工事のための現地法人ではなく、M&Aの前進基地だった。

鹿島は鹿島オーストラリア社を通じて、現地準大手建設・開発会社ICON(アイコン)社の過半数の株を数十億円で買収して子会社化。ICON社は集合住宅の建設・開発事業に強い。鹿島は同社のM&Aを足がかりに、オーストラリアの建設市場へ再進出したのである。

2019年7月に完成予定のICON社が手がけたオーストラリアのタワーマンション

2017年には医療・福祉や研究・開発、生産施設といった非住宅分野の建設事業に強い、オーストラリアの建設準大手Cockram(コクラム)社の株式70%を取得して子会社化した。住宅中心のICON社を補完でき、将来は2社の合併も検討しているという。

それまでも鹿島はM&Aを手がけてはいたが、あくまで自社事業のサポートだった。鹿島の越島啓介副社長は「建設・開発事業は,国・地域に根付いた産業であり,市場によっては,M&Aにより現地の企業や人材を活用してプラットフォームを拡大することも有効」と明かす。M&Aをサポートではなく、自社事業同様のプラットフォーム(基盤)に位置づけたのである。

2017年には米国南部で賃貸集合住宅の開発・建設・運営を手がける米フラワノイ(ジョージア州)の全株式を数十億円で取得し、完全子会社化した。鹿島は米国北部には建設・開発事業で進出しており、M&Aによる全米展開で相乗効果を狙っている。