自らのベンチャー起業家になりたいという思いを出発点に、IPOを目指す起業家のサポートをする日本でも有数の法律事務所を設立・運営するフォーサイト総合法律事務所代表パートナー大村健弁護士。大村氏はIPOも増加する一方で、バイアウトによるイグジットも増えているという。最近のベンチャー事情を聞いた。
一昨年が77社、昨年が92社。今年は最終的に100社弱に収まると言われています(いずれの数字もTOKYO PRO Marketは除く)。残念ながら、かつてのように年間200社も上場するといった状況は訪れないでしょう。というのは、IPOに際して証券会社が主幹事を引き受けるキャパシティーに限りがあるからです。以前のように、どの証券会社でも主幹事を引き受けるという時代は終わり、主幹事をできる証券会社は限られてきました。現状で証券会社が主幹事として上場を手掛けられる限界値が年間100社程度だといわれています。
ただ、年間100社が上場するということは、その予備軍は常に200~300社はいると見るべきでしょう。上場が狭き門となれば、途中でIPOをあきらめ、バイアウトに切り替える企業も出てくるはずです。実際、シリコンバレーでは、20年ほど前からIPOの減少が起こり始め、代わってバイアウトが増えていきました。日本のベンチャー市場はシリコンバレーより15~25年遅れているといわれているので、日本でも、今後はバイアウトが増えていくと予想されています。
買い手は大手IT企業が最右翼です。IT企業は少人数で大きな売り上げをつくれる可能性があるので、市場の期待も非常に大きなものになります。たとえば通常の不動産会社はPER(株価収益率)が10倍程度なのに対して、IT企業なら50倍ということもあり得ます。仮に1億円の最終利益が出れば不動産会社の時価総額は10億円、IT企業なら50億円。そのくらい化け方が違うので、IT会社はけた違いに資金力があります。そのために不動産×ITみたいな会社も出てくるわけですし、大手IT企業が、IPOを目指すような新しいビジネスを手掛けている会社を見つけると、「うちのグループに入って新規事業としてやりませんか?」といった具合に声を掛けるわけです。
2016年4月1日、電力の小売が全面的に自由化された。このイベントをトリガーに、M&Aが進むのでは、と唱えるのはエネルギー産業分野の第一人者、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授・橘川武郎氏だ。