前回(ビジネス編前編を読む)に引き続き、イタンジ・伊藤嘉盛代表に便利な顧客向けサービスに隠されたイタンジの真の狙いについて迫ります。

●あの異業種企業も不動産業に参入!? が現実になる

―「物確君(ぶっかくん)」と「追客(ついきゃく)くん」というサービスが御社のホームページに紹介されていますが、これもBtoBサービスを構成する一部という位置付けですか?

 はい、「物確君」は、物件を管理する管理会社が仲介会社からの空きの問い合わせに対し、音声によって自動応答します。ほとんどの物件情報は「レインズ」という業界データベースによって一元管理されていますが、最新の空き情報までは分からない。そのため、仲介会社はわざわざ管理会社に電話をして空き状況を確認しなければなりません。

―たしかに、仲介会社の店舗で部屋の状況を聞くと、いちいちどこかに電話して確認していますね。

 そうすると、管理会社は電話対応で忙殺されるし、仲介会社は空振りすることもあります。そこで、我々が管理会社から情報をいただき、それに基づいて自動応答できる仕組みを提供しているわけです。仲介会社は確実に物件情報の確認ができるし、管理会社にとっては電話対応の手間を省けることになります。「物確君」は仲介会社2万社、管理会社は大手100社中、約3割のご利用をいただいています。

 また、「追客くん」はいわゆるマーケティングオートメーションの仕組みで、先ほどご紹介したAIチャット機能をご提供しています。これは、100店舗以上の導入が進んでいます。

―集客や物件情報確認、顧客フォローまで、不動産賃貸仲介の各シーンで御社の仕組みが活躍されるということですね。

 われわれが持っているシステムは単なるWeb上の不動産集客メディアというだけでなく、それに不動産業務の部分も組み込まれているというのが特徴です。それが、ほかの大手メディアと最も違う点でもあります。

 そして、一連の業務のシステム化や自動化は、「ノマド」というかたちで実際にわれわれが仲介業をしているからこそできることです。導入を進める際も、自らの実績をアピールできるのが強みだと思います。

 不動産業界はまだアナログな部分が多い業界です。われわれはテクノロジーによって不動産業界で新しいバリューチェーンをつくろうとしているのです。そして、不動産賃貸業界のバリューチェーンをシステムで垂直に串刺しすることで、逆に各サービスの水平分業が進むと考えています。つまりわれわれのシステムを使って、集客はA社が、物件確認はB社が、契約に関してはC社が専業で行うというイメージが可能になるということです。

 また、システム一式を利用して他業界からの新規参入も容易になると思います。例えば大手流通企業が不動産賃貸をやりたいと思っても今はできません。しかし、イタンジの仕組みを使えば、それが可能になるということです。われわれは不動産業務全体をOEMで提供できるからです。

―あの有名不動産会社を支える仕組みは実はすべてイタンジのもの、ということもあり得るということですね。

 はい。約80万件以上ある首都圏の賃貸物件数からすると、ノマドの仲介件数のシェアは1%にもなりません。しかし「追客くん」など、われわれの仕組みを利用した成約件数は7万件にもなりますから、一気にシェアが高まります。

 ですからイタンジがノマドとして仲介業を行う単独のシェアよりも、われわれのシステムを利用している不動産会社も含めたマーケットシェアを重視しています。

 そうしてシェアを高めることのほうが不動産業界へのインパクトも大きく、この世界を変えることにつながると考えているからです。

―なるほど、単体サービスや仲介手数料のみに目を奪われていた私たちは視野が狭かった、と思わされます。続いては、昨年のノマドのM&Aに関してもお伺いできればと思います。(続きを読む

関連記事
1:ビジネスモデル編インタビュー前編を読む
2:M&A編インタビュー前編を読む後編を読む
3:人生編インタビュー前編を読む後編を読む

取材・編集:M&A Online編集部