地産地消・地産全消
新鮮な食材を届ける工夫を凝らす


その日に水揚げされた鮮魚を使うものの、価格転嫁できないわけ

同社は漁業権や買参権(セリに参加する権利)を多数保有する、稀有なチェーン系居酒屋です。まとめると、こんな感じです。

  • ・愛媛県八幡浜の漁業権→その日に水揚げされた鮮魚や「しらす」を料理に活用
  • ・新潟地方卸売市場での買参権→鮮魚の調達。特に「たら酒粕漬け」用の真鱈を買い付けて安定供給
  • ・島根県大田の買参権→あんこうなどの豊富な魚種を入手

                                    

漁業権や買参権を持つことで、新鮮かつ豊富な魚が店舗に運ばれています。同社はさらに、超速鮮魚というシステムを活用しており、漁師が水揚げした当日に店舗に並ぶようにしているのです。いわゆる6次産業バリバリの業界トップランナーです。

食材に力を入れるのは、魚だけではありません。野菜にも注力しているのです。サラダに彩りを添えるため、ほとんど流通しない「赤色のみずな」を栽培。はなの舞やさかなや道場に提供しています。自社農園ですので、異常気象でも安定して供給できる体制ができています。

6次産業の居酒屋といえば、「塚田農場」が頭に浮かぶ人が多いと思います。展開するAPカンパニー<3175>は、それを消費者に伝えることの強みを知っていました。公式ホームページを見るとわかる通り、6次産業化を徹底的に消費者に訴求したのです。すなわち、健康・安全というブランドを確立し、消費者の心をつかみました。それが高単価に繋がるのです。

一方で、「はなの舞」はどうか。この業態は、一般的に「安い海鮮居酒屋」というイメージがついています。実際、あじのたたきが590円、刺身3種盛り990円と、いわゆる大衆居酒屋と変化ない値段。企業努力により、水揚げされたばかりの魚を使って提供しているとはとても思えません。プロモーションが上手くいかず、消費者に取り組みが理解されていないのです。つまり、価格転嫁できないというわけです。

では、どうするか。チムニーは規模拡大により、自社が築いた食材供給網を活かす道を選ぶ他ないのです。それがつぼ八買収へと繋がったと考えられます。

減収減益が続く総合居酒屋「つぼ八」

同社は2019年3月期の達成目標として、1000店舗、売上高1000億円を掲げていました。公式ホームページによると、つぼ八の店舗数はおよそ300。チムニー全店の747を足して、1000を超えました。

では、売上高1000億円は達成できるのでしょうか? ひとえにつぼ八の業績にかかっています。

▼つぼ八の業績推移

売上高営業利益
2018年3月期75億7500万円(5.6%減)1億1800万円(24.8%減)
2017年3月期80億2600万円(5.8%減)1億5700万円(18.7%減)
2016年3月期85億1800万円(0.6%減)1億9300万円(23.7%減)

チムニーとつぼ八の合計売上高は540億円前後です。こちらは目標値には遠く及びませんでした。チムニーが業績の拡大よりも、店舗数を増やすことに重きを置いているのがわかります。

注目したいのは、何と言ってもつぼ八の業績が年々下がっていること。和民が総合居酒屋からの脱皮を急ピッチで進めているように(詳しくはこちら)、業態に強味を持たない居酒屋は客離れを引き起こしています。つぼ八もその罠にはまっているのです。

つぼ八の売上高は400店舗に対して、75億円ほどと小規模です。これは、直営店よりも、フランチャイズ加盟店が多いため。フランチャイズ展開はブランド力がものを言います。

今回、チムニーの食材供給網を利用し、鮮魚を軸として業態に”尖り”を持てば、加盟店増加の起死回生を狙うことができます。この買収はつぼ八にとっても、メリットの高いものとなりました。