中国企業のM&A戦略を紹介するシリーズ。今回は、フランスのマルチメディア・家電企業のトムソン(現テクニカラー)のテレビ事業を買収した「TCL集団」を取り上げる。

TCL集団とは

2018年8月に、欧州最大の家電見本市(IFA)がドイツで開かれた。ここでは各国の家電メーカが最新家電などを展示した。TCL集団も欧州市場へ向け、スマート家電などを展示した。

2018年4月には、日本の音響機器メーカーであるオンキヨーがTCL集団と業務提携することを発表した。高性能スピーカーを搭載したテレビの共同開発や米国でのTCLの販路の活用、オンキヨーブランドの一部製品の生産委託などで連携する方針であるという。

TCL集団は中国の広東省恵州市に本社を置く総合家電メーカーで、主にテレビ製品、液晶関連製品、エアコン、洗濯機などを製造・販売している。最近では、中国の無人コンビニにも出資した。TCL集団は1981年に香港企業との合弁会社としてスタートしたが、これは中国国内で初めて設立された13社の合弁企業のうちの1社だった。

もともと、広東省の一地方政府が所有していたローカル企業だったTCL集団。液晶関連製品で売り上げを伸ばし、その後、テレビなどの家電でも販売台数を増やし、世界的な家電メーカーに成長した。2004年には深圳証券取引市場にした。ところが、2002年にパナソニックと家電事業で提携した頃から、業績が伸び悩んでいた。

買収で多額の損失も

2004年、TCL集団はフランスのトムソン(現テクニカラー)と、共同出資で「TCL-トムソン電子有限公司」を設立した。米国などで展開する、トムソンの「RCA」ブランドを取得し、TCL集団は世界最大のテレビ製造業者になった。同時期には、フランスのアルカテル・ルーセントの携帯電話事業の買収も行っている。

しかし、この頃から、家電事業では中国国内の価格競争に直面したこともあり、買収に関する経験と技術の不足で多額の損失を生むようになる。経営体力が奪われた結果、株価が30%下落したり、薄型テレビへのシフトが遅れたりするようになった。

フランスのトムソンとは

一方、トムソンは、フランスのマルチメディア・家電メーカーであり、2010年に、会社名をトムソンから「テクニカラー」に変更している。トムソンは、1893年に、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の関連会社として、フランスで創業したのが始まり。

1982年には国営化されたが、1995年には家電部門と防衛産業部門が分離されれると、1999年には再び民営化される。2009年に財務状況が悪化したが、社名変更をした2010年頃から、多角化した子会社への投資縮小などを行い、事業を売却していった。2012年には、投資集団のベクター・キャピタルから増資を受けている。               

海外事業のつまづきから巻き返しへ

一度は失敗した海外事業であったが、TCL集団はその後、時間をかけ、海外事業の再生に取り組んだ。まず、2006年頃から、世界10カ国に拠点を設置し、ベトナムインドドイツなどに進出した。さらに、2015年には 三洋電機からメキシコの液晶テレビ工場を買収した。

その後、 2015年に米ヒューレット・パッカードの子会社パームを買収。2016年にはブラックベリー(BlackBerry)ブランドを買収し、スマートフォンの分野に進出すると話題になった。

液晶テレビで世界の大手企業となったTCL集団。後発のスマートフォンでも世界のシェアを増している。今後、中国、そして世界でどのように成長していくのか。

文:M&A Online編集部