中国企業のM&A戦略を紹介するシリーズ。今回は、2016年、ドイツの製造業革新プロジェクトを主導したロボット大手のクーカ(KUKA)を買収した中国の家電大手、美的集団(マイディア・グループ)を取り上げる。

最近、中国企業によるドイツの精密機械メーカー、ライフェルト・メタル・スピニングの買収を、ドイツ政府が却下するであろうと報道された。2017年にドイツ政府は、外国企業による国内企業の買収に関する規制を強化していたが、それ以来、初の事例になる。

以前にも、ドイツでは、防衛関連や情報セキュリティーなど限られた分野の企業買収について議決権の25%以上を取得する場合は経済省の審査が必要だった。この背景にあるのが、2016年の美的集団のクーカ買収であったと言われれている。

東芝の白物家電買収で日本でも知られるように

美的集団は、空調機器や冷蔵庫などの総合家電メーカーであるが、2016年に東芝の白物家電事業を買収したことで、日本でも知られるようになったのではないかと思う。 

美的集団は、1968年に創業以来、1980年に家電業界に参入すると、一気に世界トップシェアを誇る家電メーカーに成長した。一方で、AI(人工知能)やスマート家電の分野にも積極的に進出した。2014年頃から、中国のスマートフォン大手企業の小米(シャオミ)と技術提携をしたり、アリババと共同でスマート・エアコンの発売をしたりしている。

安川電機と医療・介護機器で提携

上述の通り、美的集団は2016年に東芝の白物家電を買収したが、実は日本企業との関係はそれだけではない。美的集団は、福岡県北九州市に本社を置く、ロボット大手の安川電機と中国国内に合弁企業を2社持っている。1社は産業用ロボットの会社であり、もう1社は介護・リハビリ用ロボットの会社である。

2017年には、足のリハビリ支援装置などの医療・介護機器を安川電機と共同開発し、中国市場で販売を始めた。安川電機の技術をもとに、美的集団のデザインや部材調達力を活用し、現地のニーズに応じた価格競争力の高い製品に仕上げた。高齢化が進む中国では医療や介護需要の拡大が見込まれている。

クーカは産業用ロボットの先駆者、中国で売上を拡大中

ドイツの産業用ロボット大手、クーカはどういった会社だろうか。創業は1898年。当初は家庭用照明や街頭などの会社であったが、その後、溶接・切断加工の分野で頭角を現していく。

その後、産業用ロボットのパイオニアとして、1973年に産業用ロボットの開発を行う。そして、2004年頃から、主力分野であるロボット技術やシステム技術におけるオートメーションテクノロジーに事業を集中し、その他の分野の事業は徐々に売却されていった。2014年には、上海でロボット生産が開始した。

クーカの産業用ロボットのすごさはその技術力にあると言われている。2016年には、これまで人間にしかできなかった、シャフトを締めたり、物を置く・探すといった細かい作業ができる、精度の高い産業用ロボットを実用化した。


美的集団がクーカを買収した2016年は、クーカの中国市場における売上比率は15%程度だった。買収後、中国での売上が急増しており、2017年には25%まで高まっている。ドイツ国内での雇用も増加したと報道された。

美的集団のクーカ買収には、中国政府の思惑が働いているなど、様々な報道がされている。今後、美的集団はロボット分野で、中国、そして世界でどのように成長していくのか。

文:M&A Online編集部