上期のM&A件数、2013年以来の低水準

-折からの新型コロナはM&A市場に冷や水を浴びせましたが、足元の現状は。

2020年1~6月(上期)の世界のM&Aは1万9923件、1兆2000億ドル(リフィニティブ集計)。前年同期と比べ、件数は18%、金額は42%の大幅減少となった。件数は2013年以来、金額は2012年以来の低水準を記録した。大型案件の落ち込みぶりが目立った。

欧米では3月になって本格的に影響が出始め、4月は壊滅的な状況となった。5月、6月も良くなく、7月から徐々に回復しつつある。感染拡大が先行したアジアは抜け出すのも早く、6月から中国を中心に戻ってきている。

M&A市場はスローダウンしたものの、世界的に資本市場自体は極めて活況だった。新型コロナの影響に対処する手元資金を確保するため、社債発行や増資に一斉に走った。概ね、5月中に資金の確保にめどがついた。

-日本企業では8月に、大型M&Aの発表がありました。

大型案件に限れば、現状は買い手側が様子見となっている。こうした中、いち早く動きを見せたのがセブン&アイ・ホールディングス。米コンビニ大手スピードウェイを約2兆2000億円で買収することになった。

反対に、大衆薬事業を米ブラックストーンに約2400億円で売却するのは武田薬品工業。ブラックストーンは当社の親会社でもあるが、日本でもこの種のPE(プライベートエクイティ・ファンド)が根付き始めている。今後、ノンコア事業をスピンオフする際、PEファンドに売却するケースが増える可能性がある。

コロナ後を見据えた事業再構築、秋以降が本番

-2020年後半、注目すべき点は。

世界中の企業では目下、コロナ後を見据えたビジネスの再構築に向けて、様々な選択肢が検討されている状況にある。事業の選択と集中のため、売却を進める企業がある一方で、逆に積極的に買収するケースも出てこよう。秋以降が本番だと思う。

新型コロナでは多くの企業がサプライチェーン(供給網)の分断という事態に直面した。単に調達先を変更するのではなく、事業ポートフォリオ自体を再編したり、自分たちの拠点を見直したり、いろいろなことが起きるだろう。

新型コロナの影響とは別に、クロスボーダー(国際間)の大型案件をめぐっては各国当局による審査の長期化、規制強化など保護主義的な傾向が見られ、注視したい。

-ロンドン証券取引所グループ(LSEG)によるリフィニティブ買収(2019年8月発表)は年内にも手続きが完了する見通しですが、経営統合に期待することは。

両者は極めて高い補完関係にある。世界をリードする金融のデータ・分析ビジネス、資本市場を支える重要な機能、広範なポストトレーディングサービスなどが組み合わさることで、あらゆる地域でこれまでにない、より良いサービスが提供できるようになればと思う。

◎富田 秀夫(とみた・ひでお)さん
1982年慶応義塾大学法学部卒。株式会社共同通信社、IQファイナンシャル・システムズなどを経て、2012年トムソン・ロイター・ジャパン(現リフィニティブ・ジャパン)社長に。東京都出身。

聞き手・文:M&A Online編集部 黒岡 博明