前回は、子会社ガバナンスの4つの基本方針について述べた。しかし、子会社ガバナンスの基本方針が決まり、いざガバナンスの中身を具体的に設計する際、操作変数が多くて躓くことが多い。そこで、今回は、多岐にわたるガバナンスの構成要素を網羅できる知見をご紹介する。これまでに、あらゆるM&Aを見てきたコンサルタントとしての知見をまとめたフレームワークだ。

“SERVE”…子会社ガバナンス構築のための5つの要素

それは、“SERVE”という。
Structure、Executives、Rules、Visualization of Objectives、Evaluationの頭文字を取ったものである。各要素はもちろん大事だが、この順番に意味がある。そもそも、M&Aにおいて、ガバナンスを設計する目的は、M&Aの目的を達成することだ。言い換えれば、M&Aを活用した戦略が実現しやすいようなガバナンスを構築する必要がある。

つまり、ガバナンスは戦略ありきなのだ。「組織は戦略に従う」と、アルフレッド・D・チャンドラーJr.が提示したが、このSERVEも同じ発想である。戦略を起点として、まずは組織の枠組みを設計する。そして、その組織を動かすための経営陣を検討する。次に、それら経営陣をどのようなルールの下で機能させるか検討し、最後にその目標管理、評価制度を検討するという流れだ。

分かりやすく言えば、枠組みから検討していき、具体的な内容は最後に詰めていくという考えだ。この思考フレームワークを頭に持っているだけで、ガバナンス全体が捉えやすくなる。網羅性を担保しながら、行ったり来たりせずとも、適切な順序でロジカルにガバナンスの中身を詰めていくことができるのだ。下図に具体的な検討論点を掲載したので、ご覧いただきたい。

また、この思考フレームワークを知っていれば、デューデリジェンスの際に、対象企業との企業文化の違いについても比較がしやすくなる。なぜならば、ガバナンスは、企業文化にも影響を与えているからだ。自社の組織形態や、経営体制、規定やルール、目標管理、評価制度を思い返してみれば納得できるだろう。ガバナンスの内容が変われば、企業文化も変わる。