「対象企業の力量」と「自社との違い」を見極める

例えば、対象会社への期待に照らしたとき、対象企業の経営管理がお粗末だった場合は、買収後のガバナンスは規律を重んじるべきだろう。一方、対象企業の事業が自社にとって、完全なる異業種の場合、買収後にその子会社の経営に口を挟むことはしにくい。つまり、「対象企業の力量」と「自社との違い」の相対的な組み合わせで、適切な子会社ガバナンス方針が決まってくる。

<図2>子会社ガバナンス方針

これらをまとめたのが図2だ。縦軸と横軸をそれぞれ、「対象企業の力量」と「自社との違い」と置いた場合、子会社ガバナンス方針は大きく4つに分類できる。ガバナンスと言うと、細かい規定や責任権限の話になりがちだが、まずは大枠の方針を決めるべきだ。方針は、それに影響を与える因子で決まる。今回の場合でいえば、「対象企業の力量」と「自社との違い」の2つだ。

まず経営管理力を見てみる

「対象企業の力量」と「自社との違い」の軸についても補足しておこう。まず、「対象企業の力量」の判断方法について。ディールフェーズのデューデリジェンスを通して、対象企業の事業精査を行うが、ガバナンス方針の検討時に見なければいけない「力量」は、特に、経営管理力だ。原価管理、需給管理、物流管理など、どこまで正確にできているか。

もし、対象企業の経営管理の力量をクイックに把握したければ、「SKU(最小管理単位)別の利益は、どの粒度まで管理できているか?」と質問してみるとよい。対象企業がサービス業ならば、提供しているサービス別の利益管理を問えばよい。粗利益まで管理できていることは当然として、その先はどこまで利益管理できているのか。それによって、経営管理のレベルが分かる。

まともな回答が返ってこなければ、その対象企業は「何を売れば儲かるのか」を分からずに商売をしていると言っても過言ではない。加えて、それらの利益数値はどのように取得できるかも問うとよい。それによって、システム化がどこまで進んでいるのか把握できる。企業によっては、属人的に管理をしていて、利益の算出方法がブラックボックスになっている企業もある。

対象企業の事業内容に精通できているか?

次に、「自社との違い」の判断方法について。これは対象企業の事業が、自社にとって同業種か異業種かで判断してもよいだろう。ただし、同業種だと思っていても、実は売っているモノの性質が違えば、実質は異業種とみた方がよい場合もあることに留意されたい。例えば、チルド品メーカーと冷凍食品メーカーでは、業界の外から見れば、一見似ているようで、ビジネスモデルは異なる。

また、「自社との違い」は、本質的には「対象企業の事業内容に精通できているか?」である。よって、買収直後は違いが大きかったとしても、時間が経ち、グループとして子会社の事業経験を積むことで、違いは小さくなる。その場合は、図2の右列の方針から、左列の方針に切り替えていくことも必要になってくるだろう。

以上、子会社ガバナンスについて述べた。本来は買収前に方針は設定してあるべきだが、もし親子間のルールについて、現状問題が生じているならば、今からでも方針を見直してみると良いだろう。4つの方針のうち、どれが適切だろうか。現状のガバナンスと、あるべきガバナンス方針が異なっていれば、それは早急に手を打たねばならない。時間が経つほど、是正し難くなる。

次回はガバナンスの中身について述べる。

文:経営コンサルタント、MAVIS PARTNERS代表 田中 大貴