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再生可能エネルギー普及の「カギ」は? 橘川武郎東京理科大学大学院教授に聞く

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橘川武郎東京理科大学大学院教授

-日本では難しいということですね。

日本では、ごく一部の地域でエネルギーの地産地消に取り組んでいる。北九州市八幡東区東田地区では「北九州スマートコミュニティ創造事業」を立ち上げた。ここの送電網はもともと新日鉄住金<5401>が建設したものだったので、いったんは九州電力の手に渡ったものの、現在は地域のコミュニティーが所有している。宮城県黒川郡大衡村の「F-グリッド」では、都市ガスを燃料とする自家発電設備からつくったエネルギー(電力・熱)と電力会社から購入した電力の最適化を図りながら、工業団地内への効率的なエネルギー供給に取り組んでいる。

平時には東北電力<9506>のグリッドを借りる形だが、長期にわたり停電するような非常時には、グリッドの独立運転が認められており、近隣の地域防災拠点である大衡村役場など周辺地域へ電気を供給する、国内初の取り組みだ。また、エネルギーの地産地消とは別に、再生可能エネルギーの余剰電力で水を電気分解して得た水素をエネルギー源として使う方法もある。

-送電線問題が解決すれば再生可能エネルギー比率が高まりますか?

2030年には総発電量の10%を太陽光、5%を風力、4%をバイオマスでつくる。そして9%の水力と2%の地熱を合わせると、電源の30%を再生可能エネルギー電源とすることが可能だ。その頃には原子力発電の比率も、政府がめざす20〜22%ではなく15%程度まで下がるだろう。

-日本の再生可能エネルギー比率の向上の課題は?

興味深いことに、世界で再生可能エネルギー比率が高い国・地域はグリッドが弱いところが多い。だからこそ、コミュニティーが自前の送電網を整備することができた。

日本はグリッドが充実しており、それを大手電力会社が独占しているため、たとえば東北電力のグリッドを借りた場合は電力の低圧託送料が1kWh当たり約9円と海外よりかなり高い。これが上乗せされるために、再生可能エネルギーによる余剰電力を近隣に供給することが、経済的理由で(電気料金が高過ぎるため)ほぼ成り立たない。低圧託送料を引き下げることが最大の課題だ。

「低圧託送料を引き下げることが最大の課題」と語る橘川教授

聞き手・文:M&A Online編集部 糸永正行編集委員

橘川 武郎

1951年生まれ。75年東京大学経済学部卒業。83年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師、87年同大学助教授。その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員などを務める。93年東京大学社会科学研究所助教授。96年同大学教授。2007年一橋大学大学院商学研究科教授。15年東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。20年より現職。東京大学名誉教授、一橋大学名誉教授。

著書は『日本電力業発展のダイナミズム』(名古屋大学出版会)、『原子力発電をどうするか』(名古屋大学出版会)、『東京電力 失敗の本質』(東洋経済新報社)、『電力改革』(講談社新書)、『出光佐三―黄金の奴隷たるなかれ』(ミネルヴァ書房)、『出光興産の自己革新』 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書)、『資源小国のエネルギー産業』(芙蓉書房出版)、『石油産業の真実―大再編時代、何が起こるのか―』 (石油通信社新書)、『ゼロからわかる日本経営史』(日本経済新聞出版)、『イノベーションの歴史』(有斐閣)など。電力会社10社中7社の社史を執筆ないし監修。

総合資源エネルギー調査会委員。経営史学会前会長。


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