あなたの会社は従業員の健康状態を把握していますか?

 昨今、「健康経営」が産業界にじわりと浸透しつつある。従業員の健康を「投資」ととらえ、企業活力や生産性の向上に結び付けようとの動きだ。長時間労働やメンタルヘルスなどの健康問題がひとたび起これば、“ブラック企業”のレッテルを貼られかねないだけに、こうしたリスクに備える狙いも大きい。

「健康経営」の旗振る経産省

 健康経営の旗振り役が経済産業省。政府の日本再興戦略の一環として、東京証券取引所と共同で2014年度に「健康経営銘柄」の選定をスタートした。健康経営の取り組みが株式市場などで適切に評価される仕組みづくりが目的だ。

 東証上場企業への調査回答をもとに、毎年20数銘柄(原則1業種1社)を選び、2月に公表する。過去3年連続で選定されたのはローソン<2651>、テルモ<4543>、TOTO<5332>、日本航空<9201>など9社。この中には不正検査データ問題の渦中にある神戸製鋼所<5406>も含まれる。

 健康経営銘柄は東証上場企業に限られる。そこで、こうした枠を取り払う形で2016年度に始まったのが「健康経営優良法人」の認定制度。経済団体や健康保険団体、自治体などで組織する日本健康会議と連携して実施しており、初回は大規模法人部門で235法人、中小規模法人部門で95法人(その後、223法人を追加)を認定した。

〇健康経営優良法人認定制度の対象法人

業種大規模法人部門中小規模法人部門
卸売業   101人以上      1人~100人以上
小売業     51人以上        1人~50人以上
医療法人・サービス業    101人以上      1人~100人以上
製造業その他    301人以上      1人~300人以上

 大規模法人部門は2020年までに500社(ホワイト500)の認定を予定する一方、中小規模法人部門については1万社を目安としている。両部門とも2017年度分の申請受付中で、公表は来年2月。

中小企業には高いハードルも

 健康経営を進める際、具体的な取り組みとして健康増進への体制整備、生活習慣病対策、メンタルヘルス対策、長時間残業対策などがあげられる。

 企業にとっては従業員への健康配慮をアピールすることで、企業イメージや人材採用などでプラス効果が期待できる。だが、とりわけ中小・零細企業の多くは体制づくりに手がなかなか回らず、ハードルが高いのが実情だ。

 東京商工会議所の会員アンケートによると、①定期健康診断の受診率が90%を超える企業は7割強あるものの、再検査の受診を促す仕組みがある企業は3割にとどまる②メンタルヘルスに関する啓発や教育を実施している企業は2割に満たない-といった結果だった。健康経営の基礎知識や対策の取り方などが分からない場合が多いことから、東商はその指南役として中小企業診断士ら専門家からなる「健康経営アドバイザー」の派遣を始めた。

 しなやかで強じんな企業体力の源泉はといえば、従業員の健康で生き生き働ける環境にほかならない。官主導の是非はさておき、こうした至極当たり前のことを再認識させてくれるキーワードが「健康経営」と言えまいか。

文:M&A Online編集部