Aさん(30代・男性・エンジニア)は、国内大手メーカーY社に新卒で入社。勤続年数は10年以上の中堅社員。所属する事業部門が外資系X社の事業部門と経営統合することになり、2年前に新会社Z社へ転籍した。合併当初は職場に行くのが楽しくて仕方がなかったのだが、ここ最近、気持ちに変化があるという。
キャリア・コンサルタント(以下CC):「何かあったのですか?」
Aさん:「そうですね・・・統合 当初は競合の製品技術を学べるうれしさもあって、毎日楽しく通勤していました。技術力はY社にいた頃より高い社内評価が得られ、周囲も実力を認めてくれています。勤務条件などもこれまでと変わらなかったので、特に不満もありませんでした」
CC:「統合当初は不満がなかったようですね。いつ頃から変化があったのですか?」
Aさん:「2年目に入ってから会社の風向きが変わりました。合併時は日系Y社1:外資系X社4と私たちの方が少数派でしたが、対等合併ということもあり、役職ポストも半々のたすき掛けでした。しかし最近は、X社出身者が占めるようになってきています。我々Y社出身者は、みんなで一緒にやろうという社内調和を重んじるカルチャーで育ったせいか、X社に比べて自己主張があまり強くありません。一方のX社出身者はコミュニケーション能力 に長けており、だんだんと議論の場で発言力を増しています。そればかりか、人数に差があり、提案しても多数決で必ず負けるんです。技術力で負けるのは納得がいくのですが、政治力で物事が決まるのがふに落ちません」
CC:「多数決で負けるとのことですが、本当はどうなるとよいと思いますか?」
Aさん:「そうですね・・・。経営統合してみて分かったのですが、うちの技術力は負けていないんです。だから今の環境を、よりよい商品を生み出すために技術について話し合うものへと変えたいです。ただ、、どこかで諦めている自分もいます」
CC:「今の状況を変えたいと。支援環境はありますか?」
Aさん:「主要なポストもX社出身者が占めるようになり、フォローしてくれる上司もいなくなってしまいました。転職する同僚もいて、一生同じ会社に勤めていることはないんだという雰囲気が漂い始めています。しかし自分は・・・もう少し社内に残りたいという気持ちです」
CC:「残りたい・・・それは?」
Aさん:「これまで職場では、みんなで連携しながらチームワークで結果を出してきました。しかしX社出身者の“マイワーク文化”(自分に任せてくれ、という自己完結型の仕事の進め方)に違和感を覚えていたものの、実際はそっちが業績を上げている事実もあり、いろんなやり方があるものだと気付かされた部分があることも事実です。学びのよい機会かもしれません」
CC:「マイワークで結果を出すスタイルでワクワクしそうですか?」
Aさん:「この会社で技術的にまだまだやりたい事があり、開発に没頭したい気持ちがあります。やり方を変えるキッカケとなりそうな方法を思いついたので、そこからまず取り組んでみます」