【M&Aインサイト】自社株対価の株式取得に関する税制改正を経産省が要望
経済産業省は、平成30年度税制改正要望として、自社株式等を対価とする事業買収に応じた株主について、株式譲渡益・譲渡所得課税を繰り延べる措置を講じることを求めた。株式対価M&Aの促進につなげる目論みだ。
「※ 下記記事中の時価等の数値情報や話題は、元記事となるブログ記事作成当時(2015年4~5月頃)のものであり、現在直近の数値情報や話題ではございません点 ご承知おきください。」
よく相続税対策として資産管理会社を作りその会社へ資産を移し、子供に会社を継がせる方が節税対策になると聞きます。もちろん金額により変わってくると思いますが、普通に親から子へ贈与税を支払うより得なのでしょうか?この辺の仕組みがさっぱり分かりません。
>その会社へ資産を移し、子供に会社を継がせる方が節税対策になると聞きます。
一概に言えませんが、(←すいません、いちいち、でも、本当に「一概には言えないので」)、現行税制下では節税になるケースもあります。総合的なコストやメリット、デメリットを具体的に比較して判断すべきです。
そして、どんな会社が採用しているか、ということですが、今後、伸びていくであろう資産(あるいは企業)、含み益が溜まるであろう資産(あるいは企業)を有するケースが多いです。
膨らむ相続税負担への対処、ということになります。
これらを検討し、実際に導入している中小企業では検討するケースも多いです。通常は、このようなスキーム立案に慣れた税理士が入っているようなケースが多いと思います。
>この辺の仕組みがさっぱり分かりません
このような「相続税対策として資産管理会社を作り」のスキームについての大きな枠組みですが、基本は単純です。
仕組みその1 財産の種類を変える。
仕組みその2 評価額を固定化する、あるいは、評価額を低く抑える。
仕組みその3 時代時代にあった制度を検討する。
資産保全会社スキームですと、この3つのアクションが基本です。
ご質問のような、「その会社へ資産を移し、子供に会社を継がせる方」を仮定します。まず、土地を持っていたとします。そのまま、所有者が死亡、あるいは、贈与をする。すると、当然、それは「土地」の相続または贈与になりますから、「土地」としての評価になります。
しかし、土地を会社に移して、株式に変えるとします。その場合、それは、「実質的には土地だけれども」、法律上は「株式」です。(土地の所有権はその会社で持つことになります。)すると、それは、「株式」としての評価になります。
相続税・贈与税の評価方法は財産評価基本通達に定められており、その評価方法は、まったく違います。 どっちも、「事実上は土地」なのに、評価方法が違うのです。ですから、「仕組みその1」は「財産の種類を変える」ということになります。
土地の移動が伴いますから、所有者の所得税の試算も必要ですし、不動産取得税や登録免許税の試算も必要です。
第三者割当(※ 持ち株比率が変動する割当てのことです、日常会話で言う「第三者」のことではありません)の場合は、贈与税などにも注意が必要です。
関連記事:[贈与税] ウッカリ!?第三者割当増資で贈与税が発生するケース (記事はこちら)
土地の評価額は、原則として、路線価評価方式です。国税庁が決めた路線価(1㎡当たり)に諸調整を加えて、土地の面積を乗じて評価します。
多少の評価額を減ずるテクニックはあるでしょうが、そう易々と評価額を圧縮(小さく)できるものでもありません。どうしても下げ幅は限られてきます。
しかし、株式の評価額は、原則として純資産評価方式(会社の所有資産から会社の負債を引く方法)ですが、一部、類似業種比準評価方式も取り込むことができます。
細かい計算方法は、機会があればご紹介させていただきますが、この評価方式の中に「評価額を低くする」エッセンスが含まれています。
資産の種類を転換して、評価額の引き下げの目途を立てて、そして、その時代時代にあった制度の適用を検討します。
もちろん、実務の適用に当たっては、基本的に、全てを一度、「通し」(とおし)でシミュレーションしてから、実行に移すことになります。(行き当たりばったりでは失敗してしまいます。)
ですから、私が実際にこのようなお仕事をする際は「少なくとも3年スパンで考えてくださいね」ということになります。
「時代時代にあった制度」というのは、税法はコロコロ変わるので、その時その時で、打てる対策が変わってくるので、こういった漠然とした書き方になってしまいます。
例えば、現状で言うと、「相続時精算課税制度」などを検討するケースも多いと思います。
No.4103 相続時精算課税の選択
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4103.htm
「相続時精算課税制度」の最大の特徴は「相続税計算の際に贈与時の価格で固定できること」です。
例えば、です。
2009年1月15日のファナックの株価は5,660円です。
2015年4月1日のファナックの株価は26,200円です。
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=6954.T&d=1w
仮に、ファナックの株式10,000株を持っている人が2015年4月1日に亡くなって、普通に相続人が相続した場合の課税価格算入額(課税対象財産額)は26,200円×1万株=2億6,200万円です。
しかし、2009年1月15日にファナック株式10,000株を生前贈与して、「相続時精算課税制度」を適用していれば、課税価格算入額は5,660円×1万株=5,660万円です。
仮に実効税率30%の被相続人だったと仮定すれば、約6,000万円の相続税が節税できたことになります。
(※)ただし、「相続時精算課税制度」の「相続税計算の際に贈与時の価格で固定できること」はマイナスに作用するケースもあります。上記で、もしも、ファナックの株価が2,000円になっていても、課税価格算入額は5,660円がベースになりますからね。
以上のように、仕組みその1 財産の種類を変える。仕組みその2 評価額を固定化する、あるいは、評価額を低く抑える。仕組みその3 時代時代にあった制度を検討する。 を組み合わせて対策を行う、ということになります。
次回は、実際に資産保全会社を有している実例に基づいた、ちょっとした例をご紹介させていただきます。
なお今回は一般論的な部分で書いているので、どうしても広範、一般論になってしまっております。ご容赦ください。(ご本人にとって「本当に良策なのか」は個別的状況・事情によってまったく異なります。)
[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集]M&A Online編集部
本記事は「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
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