ストック・オプションという用語は、法律上の用語ではないものの、会社の従業員等に対するインセンティブ付与等を目的として発行される新株予約権を一般的に指す言葉として社会的に認知されてきたように思われます。そしてストック・オプションの中でもいわゆる税制適格ストック・オプションは、権利行使期間や権利行使可能価額に一定の制限が加わることからインセンティブとして機能しないのでは無いかとの指摘も一部ではなされているものの、特に株式上場を目指す会社にとって広く活用されています。
さて、上述の税制適格ストック・オプションのうち、特にストック・オプション割当契約書上配慮を要する要件の一つとして、ストック・オプションの権利行使期間をその付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までとしなければならない旨の規定があります。法律の該当条文をそのまま引用致しますが、以下のとおりです。
租税特別措置法第29条の2
(本文略)
一 当該新株予約権若しくは新株引受権又は株式譲渡請求権の行使は、当該新株予約権若しくは新株引受権又は株式譲渡請求権に係る「付与決議※」の日後二年を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日までの間に行わなければならないこと。
(※は本稿にて特別に追加)
ここで重要なのは「付与決議」とは一体何を意味するのか、という点です。ストック・オプションつまり新株予約権の発行手続は会社法上に詳細に定められていますが、会社法上は新株予約権の「付与」という用語の使い方はされていません。上記租税特別措置法上の「付与決議」は、会社法上の新株予約権の発行手続においてどの段階を指しているのかが明確ではないのです。
可能性としては以下の3つが考えられます(以下はいわゆる非公開会社でかつ取締役会設置会社を想定の上で話を進めます)。
① 株主総会における新株予約権の募集事項の決定決議(会社法第238条1項、2項)のみを指す
② ①に加え、株主総会において募集事項決定の委任決議を行っている場合は、当該委任決議及び委任を受けた取締役会における募集事項の決定決議(同第239条1項)を指す
③ ①②に加え、取締役会における新株予約権の割当対象者の決定決議(同第243条第1項、2項)を指す
上記租税特別措置法上の「付与決議」は、最低限会社法上の新株予約権の募集事項決定の決議を指していることは確実かと思われます(そう解釈しないと「付与決議」を意味するものが無くなってしまうからです)。そうであれば、上記のうち①は適当では無く、少なくとも②または③と解するのが相当と考えられます。
次に②か③のどちらが「付与決議」であるかは、最終的には税務署の判断に依存するものの、実務上は保守的に③まで租税特別措置法上の「付与決議」を指すと考えた上で権利行使期間を設定した方が無難であると考えられます。よって、この点の検討を厳密に行わずに税制適格ストック・オプションの権利行使期間を定めると、上述の2年以上10年以内との税制適格要件を満たさなくなる、つまり税制非適格となってしまう可能性が生じます。
本稿では触れられませんでしたが、税制適格ストック・オプションの要件に関する論点は他にも存在致します。ストック・オプションを「付与」する際は、専門家を交えて慎重に要件を検討されることをお勧め致します。
文:司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所
Vol.120 2017.5.31 メールマガジンより転載
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