「第二次納税義務の判例まとめ」 (完)

※この記事は公開から1年以上経っています。
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 これまでの記事では、第二次納税義務の裁決事例の経緯と判決について書きました。ご紹介した事例の納税者側がとったスキームは、(怒られてしまいそうですが)いわば「小手先」というかトリッキーな印象があり、あまり勧められるものではありません。正直、そんな印象を持ちました(もちろんそれなりにリスクを承知の上で断行したのだと思いますが・・・)。

「M&Aでも要注意! 第二次納税義務」を読む
「グッドバット方式と第二次納税義務」を読む

 お読みいただいていない方のために、出来事をザックリまとめます(先日の記事と重複します)。

経緯のまとめ

 ① 税金を滞納しているJ社(社長はA氏)は業績悪化のため、新設分割により、100%子会社であるK社を設立し、K社に主要事業を承継させた。

 ② 国税は滞納されている税金を徴収するため、K社の株式を差し押さえて、公売することを伝えた。

 ③ J社は国税に金額を提示し、K社を買い取りたい旨申し出た。(公売では第三者の介入により、K社の経営が混乱を招くと主張)

 ④ J社側からの申出を受けた国税は、K社株式の鑑定を外部の株式評価の専門家(公認会計士)に依頼。その評価方法は「時価純資産法」及び「DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)」の併用であり、③のJ社からの申出額よりも高いため、申出には応じられず、公売する方針であることを伝えた。※ 裁決事例では具体的な金額の公表はされていません。

 ⑤ 国税に公売されたくないK社は、J社の社長であるA氏に、新株発行(第三者割当)増資をした。※ 国税を滞納しているのはあくまでもJ社であって、A氏個人には国税の滞納がありません。J社の代表者であるA氏に第三者割当増資を実行すれば、仮にJ社が所有するK社株式が公売にかけられても、A氏が大株主で残れる、ともくろんだようです。

 ⑥ 第三者割当増資を受けて国税側は公売を中止。その代わり、A氏に「国税徴収法39条」の「無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務」があるものとして、「国税徴収法32条1項」の「第二次納税義務者」と認定。A氏に「受けた利益」の範囲でJ社滞納税金の納付を納付するよう処分をした。

 と、細かい手法うんぬんは抜きとして、大きな視点で見た場合、「A氏のいいとこ取り」が見え見え、、、とも取れます。

 結局、やっていることの全体像は、少なくとも国税側から見れば、
 ① 国税は滞納しっぱなしで踏み倒す
 ② もうかっている事業だけA氏の支配下に残す
 と見えてしまうに決まっているのです。

 上記のスキームはA氏個人の発案なのか、A氏が依頼しているコンサルの発案なのか分かりませんが、国税から見れば「詐害行為」的なイイトコ取りに見えてしまうのでしょう。

 すると国税だって「そうはさせじ」と国税徴収法を持ってきた。そんな感じに見えてしまいます。

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