シリーズ事業承継の活用手法として、中小企業の事業承継や 財産の分散防止に効果的な信託などを解説しています。今回は平成29年度税制改正において、非上場株式の評価方法が大きく変わりました。
株価が“67%"も上昇する事例が頻発しています。今回から3回で「平成29年税制改正における事業承継税制の改正とその対応策」をお伝えしていきたいと思います。
(1) 非上場株式の評価方法の変更~利益係数の変更の影響
(2)非上場株式の評価方法の変更~評価区分の変更の影響
(3)事業承継税制と相続時精算課税制度が併用可能に
まず第1回は~利益係数の変更の影響~について解説します。
非上場株式の評価は 配当:利益:簿価純資産をの割合で評価しており、従来は 1:3:1で評価していました。
改正後は1:1:1で評価しています。
利益の比重が少なくなり、配当と純資産の比重が高くなったと言えます。
その中でも、中小企業が配当を多額に出すケースがあまりないことから、評価上はすなわち「利益が多い会社の株価は安く、純資産の多い会社が高くなる」ということになります。長年利益を蓄積された優良企業の株価が高くなることになります。
また特に注意すべきなのは「利益が減ったり赤字になれば株価は一気に下がる」という手法の効果が薄くなることになります。
特に退職金や生産性向上設備による特別償却で税務上の所得が減少しているケースは要注意です。
例えば 配当20 利益 50 純資産230という会社が退職金の支払い等で赤字になった場合を例にとると
改正前 退職金支払い前 (20+50×3+230)÷5=80
退職金支払い後 (20+0×3+230)÷5=50
改正後 退職金支払い前 (20+50+230)÷3=100
退職金支払い後 (20+0+230)÷3=83
となり、
改正前と改正後の株価を比較すると退職金支払い前でも25%上昇します(80→100)。
更に退職金支払い後は67%もの大幅な株価上昇となります(50→83)。
一方で引き下げのケースもあり
(1) 基準となる業種目株価が
現在は“直近3か月の株価"と“前年平均株価"のうち 最も低い金額
→改正後は“直近3か月の株価"“前年平均株価""2年間平均“のうち最も低い金額となります。
(2)また 比較対象として用いられている上場企業の数値に関して
単体決算数値→連結決算数値になりましたので、分母が増加して株価は減少傾向になります。
それらの影響もありますが、大きくは「利益が多い会社の株価は安く純資産の多い会社が高くなる」ということになります。長年利益を蓄積された優良企業の株価が高くなることになります。
昨年までの株価とは大きく変わっていますので、一度自社株の評価は見直してみましょう!(2割3割当たり前!にかわっています)
次回からではどうするの?という対策についてお話をします。「平成29年度税制改正で大きく変わった事業承継税制」続編 その後「無議決権株式と属人株式の活用」と続く予定です!
本記事は、 メルマガ「ビジネス・ブレイン通信」より転載しております。
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ビジネス・ブレイン税理士事務所 所長・税理士
1974年北海道生まれ。横浜国立大学経営学部会計情報学科卒業。 企業の連結納税や組織再編に関する知見を持ち、上場企業の子会社から中小企業・公益法人・独立行政法人・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務を行う。また、近年では種類株や信託、持株会社を活用した事業承継戦略の立案に注力している。戦略的税務・事業承継・税制改正などに関するセミナーや、「旬刊・経理情報」「税務弘報」「日刊工業新聞」「日経産業新聞」「銀行実務」など新聞・雑誌への執筆も精力的に行っている。