ご注意ください
この記事は公開から1年以上経っています。掲載されている情報は、公開当時のものです。

KDDIが30億出資したデリッシュキッチン、赤字23億で着地

alt

デリッシュキッチン
料理研究家のレシピを動画にした課金モデルを構築

立ちはだかるコンテンツ勝負の課金モデルの壁

ここからは「デリッシュキッチン」に絞って説明します。現在の収益柱は広告です。クライアントには名のある企業が名を連ねています。アスクル、江崎グリコ、エスビー食品、オイシックス、コーセー、サッポロビール、小学館、ブルボン、ミクシィ、明治、リクルートライフスタイル、ローソンフレッシュなどなど。タイアップ動画を作成し、商品の新たな活用法を紹介しているのです。マネタイズ方法としては、非常にわかりやすいです。

ここには背景があります。現在、スマートフォンが生活の中心にある40代以下の世代はテレビをあまり見ません。これまでテレビコマーシャルに広告宣伝費をかけていた企業は、別のプラットフォームを探しているのです。それがスマートフォンで見る、分散型と呼ばれるSNS中心の動画コンテンツでした。料理・レシピ動画の「デリッシュキッチン」などは、ターゲットが20~40代女性と絞りやすいため、クライアント側にとっては便利なプラットフォームなのです。

それでも、まあ、この広告収入モデルはやや安易です。多くの企業は巨額の広告予算をテレビとWeb、それ以外とに振り分け、期ごとに予算組みを行っています。ポッと出てきたスタートアップ企業のコンテンツに、おいそれと多額の費用を投じる企業は多くありません。その結果が業績に表れています。エブリーが5月25日に発表した決算では、純損失が23億1500万円となっています。広告収入にだけ頼って事業構築を進めてきた危うさが露呈してしまいました。そこで課金システムの導入となるわけです。

課金の難しさは大きく2つあります。1つは有料の価値をユーザーに提供するだけの、強いコンテンツ力を持たないといけないこと。デリッシュキッチンは2018年1月から、月々480円で「オレンジページ」や「saita」などで活躍する料理研究家のレシピ動画を見放題にするサービスを開始しました。しかし有料のサービスとしては、まだまだ不十分な印象は拭えません。スタートアップ企業が企画力を磨くのは、相当力がかかります。開発エンジニアとは違い、人を採用すれば終わり、というものではないからです。雑誌の編集部が高い価値を持つのは、長い年月をかけて企画力を磨いてきたためです。

さらに、磨いたコンテンツをユーザーに認知してもらう必要があります。これが2つ目の難しさ。マーケティングです。靴のネット販売を行う「ロコンド」が、上場時に得た資金で大々的なテレビCMをうったものの、今一つ業績が伸びないことが話題となっています。スタートアップは開発などの優秀なエンジニアは多いものの、マーケティングが上手くないパターンが多いです。そこへの投資不足や人材の薄さが露呈してしまうのです。ユーザー獲得に力を注いできた若い企業の「あるある」話です。それはエブリーも同じ。「ぶっちゃけめんどくせぇ」誰しもがそう思った(※筆者の想像です)矢先の出来事でした。

KDDIと手を組んで、「ライブコマース」事業へと突き進むという、壁を乗り越える大チャンスを得ることになったのです。

NEXT STORY

創業家の内紛シリーズ(1)ビジネスライクな争い編

創業家の内紛シリーズ(1)ビジネスライクな争い編

2017/10/18

今回から3回にわたり、「創業家の内紛シリーズ」として、創業家が関係する近年の内紛を振り返ってみたい。第1回目は「ビジネスライクな争い編」としてクックパッド、出光興産、ほっともっとの3社を取り上げる。

関連のM&A速報