こうした状況を受けて、自治体から住民に「EVシフト」を促す動きが出てきた。ガソリンスタンドが1軒しかない岡山県西粟倉村では農業用水で発電する出力5キロワットの小規模小水力発電所のほか、村役場や高齢者生活福祉センター前、道の駅などにEV用の急速充電器を設置した。
トヨタのお膝元である愛知県豊田市では「給油所過疎地」ではないにもかかわらず、ガソリンスタンドから遠い中山間地の旭地区にある小水力発電所の電力を利用したEV用の急速充電器も整備している。すでに最寄りにガソリンスタンドがない地域では、EVしか選択肢がなくなりつつあるのだ。
確かに急速充電器の数が増えたというものの、まだまだ少ないのは事実。ただ、EVは電気さえ通っていればどこでも充電できる。時間はかかるが、家庭でも100ボルト電源で充電できる。一方、ガソリンを燃料とするHVは、ガソリンスタンドが近くになければ完全に「お手上げ」だ。
政府がガソリン車の販売廃止を打ち出すことで、今後ガソリンスタンドの閉鎖は急速に進むだろう。そうなれば都市部以外ではガソリン給油に困るケースが増え、HVを利用するのは難しくなる。都市部のHVユーザーにしても日常使いではよいが、旅行やビジネスで地方に出かけると給油で苦労することになり、EVへの切り替えが進む可能性が高い。
こうしてEVの販売台数が増えれば車両価格は下がる一方、そのあおりを受けて生産台数が減少するガソリン車やHVの車両価格は逆に上昇するだろう。そうなればEVシフトは一気に進み、HVはガソリン車と運命を共にして市場から消えることになる。
HV依存度が高い日本車メーカーはEV開発の国際競争で後れを取りつつあり、巻き返しが急務だ。もし、国産車メーカーが政府による「ガソリン車販売廃止」をHVで乗り切れると考えているとしたら、国内自動車市場すら失うことになりかねない。
文:M&A Online編集部
政府は新型コロナウイルスの緊急経済対策としてまとめた2020年度補正予算に、中小企業の事業承継支援策を盛り込んだ。総額100億円を投入し、新たな補助金制度や全国ファンドの創設などを推進する。