政府が公表した「2020年版ものづくり白書」によると、事業環境・市場環境の状況認識について、約3割の企業が「同業他社の廃業が増えている」と回答した。このうち、中小企業の割合は大企業の3倍超に達した。
ものづくり白書は製造業の現状と課題をまとめたもので、2020年版で通算20回目。経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同執筆し、5月29日に閣議決定した。白書では2019年11月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が製造業者に実施した調査結果などを活用し、大企業291社、中小企業4072社の回答を掲載している。
事業環境・市場環境の状況認識は、全企業を合わせて「より顧客のニーズに対応した製品が求められている」が72.9%と最多。「製品の品質をめぐる競争が厳しくなっている」「原材料コストやエネルギーコストが大きくなっている」が60%を上回った。
一方、27.6%が「同業他社の廃業が増えている」と回答。企業規模別の内訳は大企業が8.2%だったのに対し、中小企業は約3.5倍の29.0%に及んだ。
業種別で見ると、鉄鋼業(36.1%)、プラスチック製品製造業(33.7%)、金属製品製造業(33.2%)が30%を超えた。
白書は「国際競争の激化などで製造業に関する事業所の倒産や廃業などが相次いでいる」と指摘。1998年に37万3713だった事業所数は2017年には18万8249と、20年間で半減したとしている。
ものづくり企業の経営課題も調査した。事業存続にも関わる「後継者不足」を挙げた大企業は22.7%、中小企業は17.1%だった。
課題別では「価格競争の激化」「人手不足」「人材育成・能力開発が進まない」といった回答が40%を超えたが、「後継者不足」の割合は「市場の縮小」(大企業22.0%、中小企業20.5%)、「売上不振」(大企業18.9%、中小企業22.1%)とほぼ同水準に達した。
国内製造業をめぐる今後の動向については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を重視。国際競争力を高める上ではデジタル・トランスフォーメーション(DX)などを推進するとともに、組織内外の経営資源を再結合・再構成する必要性を強調した。
また、「事業環境・市場環境の状況認識では、経営課題に直結する厳しい認識に基づいた回答が多数を占めている。新型コロナウイルス感染拡大の経済・雇用への影響について、引き続き注意していく必要がある」としている。
関連リンク:2020年版ものづくり白書(全体版)|経済産業省
文:M&A Online編集部