【アークス】北海道のスーパーの雄が仕掛けるM&A戦略とは?

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支配権に固執せず会社を大きくした

 大型の設備投資や上記のようなM&Aのためにエクイティ・ファイナンスが必要となるケースにおいても、筆頭株主であるオーナー経営者が自らの持株比率の低下を懸念し、持株比率の低下を伴うエクイティ・ファイナンスを行わないということも考えられる。この点について、アークスを例に以下で述べることとする。

■時価総額(オーナー持分の時価)の推移

 アークスの15年2月期の有価証券報告書の「大株主の状況」によると、代表取締役社長である横山氏が筆頭株主である。横山氏の持株比率の推移とアークスの時価の推移、及び時価のうち横山氏の持分の推移を上のグラフで示している。

 11年のユニバースの子会社化にあたり実施した株式交換によりアークスは11,149,121株を交付しており、これにより発行済株式総数が大幅に増加している。発行済み株式総数の増加に伴い横山氏の持株比率は7.2%から5.7%に下落している。しかし、横山氏の持分(財産価値)は、時価総額の増加とともに増えている。

 同社の時価総額の増加は、いわゆるアベノミクスより前の12年頃から株価の上昇によるものである。仮に横山氏が自らの持株割合(支配権)の確保に固執して経営していたら、持株割合が低下する株式交換によるM&Aは行われず、アークスの成長(時価総額の増加ともいえる)は実現しなかったはずである。

 オーナーは、自らの支配権の確保に固執せず会社を大きくするための経営を行うことで、結果的に自らの持分(財産価値)が増加することになった。

■ アークスの経営指標の変化

項 目 2012年2月末 2015年2月末
売上高 3481億円 4703億円
営業利益 111億円 127億円
株式時価総額 721億円 1283億円
横山氏持ち株比率 7.2% 5.7%
横山氏持ち株時価 35億円 68億円

企業の名称などは記載当時のものです。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

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