ご注意ください
この記事は公開から1年以上経っています。掲載されている情報は、公開当時のものです。

【アークス】北海道のスーパーの雄が仕掛けるM&A戦略とは?

alt
画像はイメージです。

売上高グループ1兆円を目指す

 アークスのM&A戦略は、事業規模の拡大を目的としたシンプルなものだ。食品スーパーを営む会社を買収することが多いが、他社から店舗を事業譲受するケースも見受けられる。

 創業以来、北海道内で事業を営んできたが、11年に青森県で食品スーパーを営むユニバース(売上1025億円)の子会社化により本州進出を果たし、売り上げは4000億円を超えた。14年9月にベルプラス(売り上げ400億円)を子会社化したことで岩手県の店舗が18店舗、宮城県の店舗が7店舗増加した。ベルプラスの売り上げの通年寄与により、16年2月期の業績予想では売り上げ5000億円を突破することを見込んでいる。いずれのケースも、地域でトップシェアを取れる企業を買収しているのが共通点である。

 アークスは、将来的にはグループ全体での売上1兆円を目指すことを表明している。中期経営計画によると、設備投資計画では、108億円を見込んでおり、今後さらにM&Aが加速するものと思われる(アークスでは設備投資を「総攻撃」と表現している)。

 食品スーパーのような内需産業は今後爆発的に売り上げを増加させることは困難なため、引き続きM&Aを積極的に行い、会社の規模を拡大していくことになると思われる。アークスがカバーしているエリアは北海道と一部の東北地方のみであり、今後、事業拡大の余地は十分に残っていると言える。

■アークスの財務分析 

 業績の推移に目を移すと、売り上げおよび利益が、ともに毎期順調に増加していることが分かる。双方が同調しており、会社の規模の拡大によって、売り上げおよび経常利益が増加していることが一目瞭然である。総資産は03年2月期、10年2月期、12年2月期、13年2月期にそれぞれ大きく増加しているが、これはいずれもM&Aが要因である。03年2月期は福原を子会社化、10年2月期は札幌東急ストアを子会社化、12年2月期はユニバースを子会社化、13年2月期はジョイスを子会社化している。

 また、経常利益と当期純利益のグラフを比較すると、03年2月期と12年2月期では、当期純利益が経常利益を大幅に上回っている。これは、03年2月期は福原を株式交換にて子会社化した際に発生した負ののれん(98億円)、12年2月期はユニバースを株式交換により子会社化した際に発生した負ののれん(82億円)により、特別利益が増加したことが要因である。

■自己資本比率

 純資産・総資産・自己資本比率の推移をグラフにした。10年2月期に自己資本比率が52%に低下しているが、その他の期はおおむね60%前後となっている。09年9月に札幌東急ストア全株式を51億円で買収しているが、有利子負債は09年2月期が112億円であったのに対し、10年2月期は204億円と90億円増加している。これが原因で自己資本比率が低下している。

 しかし、その後のアークスのM&Aにおいては、自己資本比率の低下(有利子負債の増加)を気にしてか、規模の大きな会社の買収の際には、株式交換の手法を用いている。11年11月のユニバース(売り上げ1025億円)の子会社化、12年9月のジョイス(売り上げ373億円)の子会社化、14年9月のベルプラス(売り上げ406億円)の子会社化はいずれも株式交換による子会社化である。そのため、10年以降は大きな借り入れがないため、自己資本比率に大きな変動がないことが上のグラフから分かる。

 なお、ユニバースの子会社化の際に新株を発行し100億円増資したことで、資本金が100億円から200億円に増加している。

 アークスでは、株式交換の際に新株を発行して株式交換の対価として充てている。エクイティ・ファイナンスを有効活用し自己資本比率を保っていると言える。

 一方、エクイティ・ファイナンスでは、新株発行に伴って既存株主の持株比率が低下することになる。例えば中小企業のオーナーのような支配権を有しているような株主からすると、持株比率の低下は重大な問題となる。中小企業のオーナーのように支配権を有しているとまではいかなくとも、上場会社においても経営者が筆頭株主であるケースは少なくない。

NEXT STORY

【M&Aインサイト】日本の子会社買収(売却)市場:上場企業間の取引の実証分析

【M&Aインサイト】日本の子会社買収(売却)市場:上場企業間の取引の実証分析

2016/03/02

慶応義塾大学・牛島教授が解説する。この研究は、企業間の子会社買収(売却)に注目し、このつながりを分析するものである。