【鎌倉新書】出版業から「終活企業」に大変身、M&Aで介護に戦線拡大へ

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鎌倉新書が本社を置くビル(東京・京橋)

2年ぶりにM&A、介護関連事業を買収

鎌倉新書は10月15日付で、介護関連事業を手がけるエイジプラス(大阪市)から介護施設(有料老人ホーム、高齢者住宅など)紹介事業と見守りサービス事業を買収する。同社として2年ぶりのM&Aで、取得金額は1億2000万円。

傘下に収めるエイジプラスは2007年に設立。紹介事業では業界最大級の全国約7000の提携施設数を誇り、専任カウンセラーが初回相談から見学まで同行する対面形式の対応を基本とする。見守りサービスは単身高齢者世帯を対象に「きずなコンシェルジュ」「きずな電話」などのサービスを展開している。

鎌倉新書は2020年8月に「いい介護」の名称でポータルサイトを立ち上げ、在宅介護や施設介護に関する相談・紹介サービスをスタートしたばかり。エイジプラスの事業を取り込むことで、終活の始めの一歩である介護領域への対応力を強化するのが狙いだ。

持ち家など所有不動産の査定・売却、老後資金や年金の不安、遺品整理・生前整理の悩み…。終活ビジネスの間口を広げるため、ここ数年来、「いい不動産」「いい保険」「いい整理」などの関連サービスも相次ぎ始めている。

M&Aの取り組みをみると、2019年2月に、海上散骨事業を手がけるハウスボートクラブ(東京都江東区)の株式50%余りを取得し子会社化した。ハウスボートクラブは2007年設立。新たな葬送の形とされる海洋散骨を「ブルーオーシャンセレモニー」のブランドで展開するほか、世代を超えて終活について語り合えるカフェを都内で運営する。

2030年度に売上高300億円を目指す

2022年1月期業績予想は売上高26.3%増の40億9000万円、営業利益2.7倍の7億2000万円、最終利益2.7倍の5億円。売上高は過去最高となり、5年前の3倍以上に増える見通しだ。

終活市場は超高齢社会の到来を背景に引き続き、ビジネスチャンスが膨らむことが確実視される。一方で、仏壇仏具やお墓はユーザーの節約志向で購入商品の小型化・低価格化が進み、葬儀も核家族化や規模縮小で単価低下が続いており、経営のかじ取りが一層難しさを増している。

鎌倉新書は2030年度に向けた中期経営計画で「延べ集客数100万人、売上高300億円程度、営業利益100億円以上」を目標に掲げている。この実現には同社の終活プラットフォーム企業として認知度向上とともに、新たなM&Aの出動がカギを握ることになりそうだ。

主な沿革
1984 仏壇仏具業界向け書籍の出版を目的に、鎌倉新書を都内で設立
2000 ポータルサイト「いい葬儀」を開始
2001 月刊誌「仏事」を発刊
2003 ポータルサイト「いいお墓」を開始
ポータルサイト「いい仏壇」を開始
2006 エンディングノート「旅立ちの準備ノート」を発売
2010 通夜・葬儀・法事の際の生花・胡蝶蘭を当日配達する販売サイト「供花・胡蝶蘭net」を開始
2015 東証マザーズに上場
2017 東証1部に上場
2019 海洋散骨サービスのハウスボートクラブ(東京都江東区)を子会社化
ポータルサイト「いい相続」を開始
2020 ポータルサイト「いい介護」を開始
2021 エイジプラス(大阪市)の介護施設紹介・見守りサービス事業を取得

文・M&A Online編集部

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