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「STRASBURGO(ストラスブルゴ)」が民事再生 負債総額は46億円
セレクトショップ「STRASBURGO(ストラスブルゴ)」などを運営するリデアが11月17日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し同日、監督命令を受けた。負債総額は約46億円。事業はW&Dインベストメントデザインと八木通商に譲渡する予定。
アメリカで経営破綻をした著名アパレルを次々に買収し、再建することで成長を続けるオーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)が注目されています。
ここ数年、日本でも破綻のニュースが話題になったブルックスブラザーズ、バーニーズ ニューヨーク、フォーエバー21の再建も同社によるものです。
ブランド名 | カテゴリ | 買収年度 |
---|---|---|
プリンス(Prince) | テニス用品 | 2012年 |
ジューシークチュール(Juicy Couture) | カジュアルウェア | 2013年 |
ジョーンズニューヨーク(Jones New York) | レディースウェア | 2015年 |
エアロポステール(Aéropostale) | カジュアルウェア | 2016年 |
ノーティカ(NAUTICA) | マリンスポーツウェア | 2016年 |
ナインウエスト(NINE WEST) | 婦人靴 | 2018年 |
ボルコム(VOLCOM) | スポーツウェア | 2019年 |
バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK) | 高級百貨店 | 2019年 |
フォーエバー21(FOREVER 21) | ファストファッション | 2020年 |
ラッキーブランド(Lucky Brand) | カジュアルウェア | 2020年 |
ブルックス ブラザーズ(Brooks Brothers) | 紳士服・婦人服 | 2020年 |
ABGの公式ウェブサイトを見ると、同社が現在保有するブランドは50ブランドあるようで、上記以外に日本でもおなじみなのは、ストリートブランドのAIR WALK、VISONあたりでしょうか。ABG傘下の年商は、合計すると1.45兆円を超えるそうです。
https://www.authenticbrandsgroup.com/
ABGは、米国最大級の投資ファンド、ブラックロックらの資金に支えられたファッションビジネス専門の管理会社です。
創業者でCEOのジェイミー・ソルター氏は、カナダ出身でマーケティング畑に強く、スノーボードブランドのRIDEの創業者の一人でもあります。その後、スポーツ系ブランドのベンチャー向け投資会社に携わり、2010年にABG社を創業しました(Wikipediaより)。
ABGは、国際的な知名度を持ったブランドながら、ブランド力のなさや商品力の弱さでもない、負債などの財務上の問題の失策で破綻したブランドを買収し、再建することを生業としています。
不採算店を閉め、リブランディング(若返りなど)を行い、更に知名度を利用したライセンススキーム(ブランド使用権のライセンス収入)を行うなど、これまでそれぞれのブランドが構築して来た「ブランドの価値」を最大限に活かすことを得意としているようです。
アメリカはとかくチャンスとあればビジネスを急拡大し、更に経営者が代われば、気がつけば企業が肥大化、オーバーストア(店舗過剰)になっている、なんて話がたくさんあります。
特に小売業は日本も含め、古今東西で、採算や人材育成のスピードを度外視した、成長重視の過剰出店政策が、自滅的経営破綻に至る最大の要因です。
昨今のアマゾンエフェクトによるショッピングのオンラインシフトやコロナショックはあくまでも、きっかけであって、多くの米国小売チェーンの経営破綻の本当の理由は・・・販売効率の悪い店の過剰出店投資と、積みあがった不採算店舗の山による資金ショートだと思います。
そうなってしまったら、仕方ないので、まずは資金繰りにケリをつけて、リストラを行って、身軽にし、リブランディングできれば良し、できない場合はライセンスブランドとしてライセンスフィーを稼いでブランドを存続させる方法もあります。
もっとも、ライセンスしか選択肢がなくなったブランドは、ビジネスボリュームが大きく、最もお金になるであろう量販系企業にライセンスされることが多いと思います。
日本は少子高齢化で市場拡大は望めませんが、これから世界的に拡大の余地があるアパレル市場は、世界の人口動態からしても、低価格マーケットの拡大が中心になるでしょう。破綻した、かの著名ブランドの知名度も、最終的には量販系マーケットでの需要に活かされることになる、というわけですね。
経済が右肩上がりの成長期は、ブランドの立ち上げラッシュが進むでしょう。
一方、マーケットも成熟期に入れば、ブランド破綻のままでは、もったいないので、これからは各ブランドのライフサイクルの最後にブランドライセンスという出口を用意する必要が増えてくるでしょうね。
ブランドライフサイクルの中で、一旦役目を終えたブランドも知名度さえあれば、ライセンスブランドとして再利用するというブランド資産活用のエコシステムがファッションマーケットにあってもよい。ABGの活動を見ていると、これからの時代、そんなブランド再建、再生のありかたをビジネスにする企業の必要性を感じます。
参考:日本経済新聞 2020年10月24日付
文: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
有限会社 ディマンドワークス 代表
グローバルなアパレル商品調達からローカルのチェーン店舗運営まで、ファッション業界で豊富な実務経験を持つファッション流通コンサルタント。在庫最適化を切り口とした業務再構築支援を得意とする。
略歴:1965年東京生まれ 1988年明治大学商学部を卒業(専門は国際経済論、貿易論)。同年、総合商社に入社しアパレル部門に配属。大手・中堅アパレル企業向け国内外OEM生産受託営業、ヨーロッパブランドの日本法人(輸入・製造卸)立ち上げを経験。2004年、フリーエージェントプロワーカー(IC)として独立。有限会社ディマンドワークス設立。近著に「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)あり。
セレクトショップ「STRASBURGO(ストラスブルゴ)」などを運営するリデアが11月17日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し同日、監督命令を受けた。負債総額は約46億円。事業はW&Dインベストメントデザインと八木通商に譲渡する予定。