中国企業のM&A戦略を紹介するシリーズ。今回は、2013年に米国の豚肉生産最大手、スミスフィールド・フーズを買収した「万洲国際(WH)グループ」を取り上げる。この買収により、スミスフィールド・フーズは、万洲国際グループの完全子会社になった。

先ごろ、香港上場企業の経営幹部のうち、2017年の報酬が最も多かったのは万洲国際グループの会長兼CEOの万隆(ばんりゅう)氏だったと報道された。2017年の万氏への給料・株式支払いは約320憶円(約2億9,100万米ドル)。これはアップルCEOのティム・クック氏やテスラCEOのイーロン・マスク氏よりも多い報酬であった。

万洲国際グループとは

中国人にとって豚肉は、料理に欠かせない食材の一つ。豚肉大国を支えるのが世界最大手の豚肉加工業、万洲国際グループである。万洲国際グループは、2014年に現在の名称になるまでは、双匯(そうかい)国際グループと呼ばれていた。前身は、1958年に中国・河南省に設立された食肉の加工工場。現在の会長兼CEOである万氏は1984年に、この工場の工場長に就任している。1992年発売のソーセージがヒットしたのを機に、売上を拡大していった。

その後、1998年に深圳証券取引所に上場した。2000年前後からグローバル化を推し進め、2002年には中国で日本ハムと合弁会社を設立した。2013年にスミスフィールド・フーズを買収した後、2014年には香証券取引所に上場した。

米政府の承認を得て買収

スミスフィールド・フーズの買収は、中国における米国産の豚肉の需要増加に対応するための取り組みの一環だったが、米国の政治家の一部に懸念を引き起こし、財務省の監督下にある対米外国投資委員会(CFIUS)の審査を受けることになった。 対米外国投資委員会は海外からの投資に関し、国家安全保障上の問題がないかどうか審査する機関である。

その後、対米外国投資委員会はスミスフィールド・フーズを買収することを承認し、買収額は47億米ドル(約4700億円)と報道された。引き継ぐ負債を含めると、71億米ドル(約7100億円)に達した。これは、当時の中国企業による米企業の買収として過去最大だった。