最近耳にする機会が多くなったCRM(顧客情報管理)。CRMの業界で世界一を誇る米セールスフォース・ドットコムが6月10日、データ分析大手の米タブローソフトウェアを買収することを発表した。

買収手法は株式交換。タブロー株1株につきセールスフォース株1.103株が割り当てられることとなる(公表直前日のタブローの株価に基づくと、プレミアムは42%)。買収規模は153億ドル(約1.6兆円)にのぼり、セールスフォース史上最大の買収となる。今回はそんなタブローがどのような会社なのか、サブスクリプション(定額制サービス)企業の財務諸表の特徴にも触れながら見ていきたいと思う。

赤字会社をなぜ巨額買収

タブローは、社名と同じ「Tableau(タブロー)」というデータ分析ソフトを開発・提供している2004年設立の会社。会社の規模が大きくなればなるほど、会社が持つ各種データも膨大なものとなり、このデータから今後の採るべき戦略や問題点等を見つけ出すためにかかる時間も膨大となる。タブローは、この大量のデータを以下のように一瞬で可視化し、データから意思決定を生み出すまでの時間を大幅に削減する点が最大の売りだ。

(タブローHPより抜粋。https://www.tableau.com/ja-jp/about/blog/2019/6/use-pricing-analytics-to-manage-revenue-models)

さて、そんなタブローの財務諸表を見てみよう。以下はタブローのAnnual report(年次報告書)から抜粋したPL(損益計算書)推移だ。

タブローは、ソフトウエアにかかるライセンス収入及びその後のメンテナンスやサポートから生まれる収入を主な収益基盤とする、いわゆる「サブスクリプションモデル」の会社である。2018年12月期から新収益認識基準(ASC606)を適用しており、この影響で収益は1億7000万ドル、最終利益は2億ドル増加しているものの、継続的に赤字の状態が続いている。

「なぜそんな赤字続きの会社を1.6兆円もの規模で買収するのか?」となってしまいそうだが、タブローのようなサブスクリプションモデルの会社ではPLの数字だけを見て会社の善し悪しを判断してはいけない。

PLとキャッシュの動きにズレ

サブスクリプションモデルにおいては、基本的に月額課金制あるいは契約期間一括払いのいずれかによって支払いが行われるが、一般的に契約期間一括払いを選ぶと月額課金の場合よりディスカウント(割り引き)を得られるため、年間前払などを選ぶ利用者もいる。そして、このように利用料総額について前払いが行われた場合、PLとキャッシュの動きに大きなズレが生じることとなる。

例えば、期の真ん中で1年分の利用料を前受した場合、キャッシュは1年間分受け取るものの、PL上の売上高は半年分しか計上されないこととなり、PLとキャッシュの動きに大きなズレが生じることとなる。そしてこのようなズレは、BS(貸借対照表)の前受収益に大きく現れる。