前稿で述べたように、実質8割が失敗するといわれるクロスボーダーM&Aで、浙江吉利控股集団有限公司(以下、「吉利」)は米フォード・モーターから赤字会社のボルボ・カーズ(Volvo Personvagnar AB;以下、「ボルボ」)を買収し、10年後のいま、両社はWIN-WINの関係を築いている。

吉利は当時、売上高の1年分にあたるー約18億ドル(約1600億円)を投じてボルボを買収し、企業の再生に賭けた。

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買収後の驚異的な成長回帰からわかったこと

結果として、吉利はこの賭けに勝った。その様子を数字で確認してみよう。以下は、買収翌年の2011年から2018年までの吉利とボルボの業績変化である。

〇吉利の自社事業は7.5倍に ボルボの業績は吉利買収後1.5倍に 

イグナイトパートナーズ作成

(注)吉利とボルボは持ち株会社の下に並列でぶら下がっており、吉利の業績にボルボの業績は含まれない。

さらにボルボが2011年~2018年の間に、累計で獲得したEBITDAは、約162億米ドルに上る。

M&A投資に成功 IRR換算で33%超のリターンに

「買収額の18億米ドル」は、結果的にわずか1年ほどで回収し、8年間で9倍のリターンを出した計算になる。これはIRR(内部収益率)換算で33%超の投資リターンであり、M&Aの投資採算としても十分に成功といえる。

成長率だけではない。吉利グループは規模の面でも、すでに「新興系中国民族メーカー」の域を脱している。

吉利、ボルボ両社の2018年の売上高を単純に合計すると約430億米ドル。これは、マツダの約320億米ドル、スバルの約280億米ドル(共に2018年、換算レートは期末時点)を上回る。吉利はボルボの買収を通じて、すでにマツダ、スバル越えを実現してしまった。

では次に、この背景を生産台数の分析からもう少し詳細に見てみよう。これは、吉利とボルボの世界生産台数の地域別推移である。

〇吉利汽車集団の生産台数(地域別)

吉利ブランドによる生産台数
マークラインズDBなどによりイグナイトパートナーズ作成

〇ボルボの生産台数(地域別)

ボルボの生産台数
マークラインズDBなどによりイグナイトパートナーズ作成

このグラフから読み取れることは多くあるが、筆者としては次の点に注目したい。