ホステル・ホテル運営のTRASTAが倒産した理由

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※画像はイメージです

「STAY in the City」「STAY Vintage」「住亭(ステイ)」の3ブランドでホステルやホテルを運営していたTRASTAが、6月2日に東京地裁から破産開始決定を受けました。帝国データバンクによると、負債額は4億6,600万円とみられています。

同社はand factory<7035>とタッグを組んだIoTホテル「&AND HOSTEL」をオープンするなど、ホテル業界で先進的な取り組みをしていました。しかし、ターゲットを海外観光客としていたため、新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限の影響を真正面から受けました。インバウンドの消失により、資金繰りが急悪化して倒産となりました。

この記事では以下の情報が得られます。

・TRASTA代表の経歴
・TRASTAの誕生から倒産まで
・新型コロナウイルス感染拡大前のホテル事情

インターアクションの役員から子会社TRASTAの社長へ

TRASTAの代表・木地貴雄氏の父親は、検査用光源装置などの製造販売を行うインターアクション<7725>の木地英雄会長です。貴雄氏は父親の資産管理会社で社会人としてのキャリアをスタートしました。2008年にインターアクションの取締役に就任。2009年に子会社BIJの代表取締役社長に就任します。貴雄氏はこのとき24歳でした。

BIJはインターアクションが2005年6月に設立した会社で、セキュリティー関連製品の製造販売を行っていました。2011年6月に太陽光発電事業を開始。当時の売上高は5,000万円程度でした。

TRASTAの前身BIJがシステム開発会社を買収

BIJは2015年12月にWebシステムの開発を行うCuon(千代田区)を4億円で買収。2016年5月期の売上高は13億4,200万円となりました。

BIJは、セキュリティー太陽光発電ーシステム開発という変遷を経て、売上高が10億円を超える規模まで成長しました。そして、2016年6月にand factoryと組んで海外観光客の民泊の受け皿となる宿泊施設「HOSTEL APARTMENT」を開始しました。ITで遊休不動産を活用するという新たな事業です。これが後のTRASTA(BIJ)の主力事業へと発展します。

2017年2月にRobot Home(旧:インベスターズクラウド、TATERU)<1435>が1億円を出資し、BIJの株式32.05%を取得して持ち分法適用関連会社としました。

更にBIJは2017年8月にも第三者割当増資を実施して、4億2,500万円を調達しています。引受先はRobot Homeのほか、SBIインベストメントとみずほキャピタルが運用するベンチャーファンドです。当時の注目領域だったインバウンド需要を取り込み、IT化が遅れていた宿泊施設にIoTを持ち込んだBIJは、IPOを視野に入れた成長期待の高い企業だったと言えます。

Robot Homeは2018年3月末の段階で保有比率を43.3%まで高めていましたが、翌2019年6月に全保有株式を売却しています。2018年2月にBIJはTRASTAに社名変更しています。

ホステルで投資額を抑えていたTRASTA

2020年に入るまで、海外観光客の宿泊数は右肩上がりでした。2019年の外国人の宿泊者数は1億1,570万人。2018年比で22.7%も増加をしています。

■外国人宿泊数推移(平成28(2016)年から令和2(2020)年)|観光庁

観光庁「宿泊旅行統計調査」より
観光庁「宿泊旅行統計調査」より引用

好調な業界に飛び込んだというだけでなく、TRASTAは「ホステル」という特異な業態に特化していた点でも先見性がありました。

ホステルは宿泊部屋や浴室、トイレなどを他の宿泊客と共用し、フロントが設置されていない簡易宿所に分類される形態です。運営側にとっては人件費を低く抑えることができ、部屋ごとに浴室やトイレを設置する必要がないために、初期投資額を低くすることができます。

宿泊料金を3,000円程度と安く設定できるため、他の施設との差別化を図ることもできました。遊休不動産の活用を掲げていた背景には、建物の躯体を有効活用できるホステルに商機を見いだしていたことがあります。

また、TRASTAは買収したCuonの開発力を活かし、スマートチェックインや予約サービスなどを導入することができました。宿泊施設向けのレベニューマネジメントシステムを、他のホテルに導入する取り組みも進めていました。

and factoryと共同開発した「&AND HOSTEL」が軌道に乗ると、本格的なホテル運営へと軸足を移します。2019年4月に京都にオープンした「住亭」は、外国人に人気のモダン和テイストを取り入れたホテルで、1泊2名20,000円と宿泊料金も割高になっていました。

この時期は先行投資が膨らんでおり、TRASTAは2019年5月期に7億4,500万円の純損失を計上していました。投資回収に入る段階に入って、不幸にも世界的なパンデミックに襲われることとなりました。

2020年の外国人の延べ宿泊者数は、1億1,570万人から1,800万人まで84.4%減少します。2020年10月末にはTRASTAの全従業員を解雇し、営業活動を停止していました。

■TRASTAの年表

年月 出来事
2005年6月 インターアクションの子会社としてBIJを設立。セキュリティー関連製品の製造販売を行う
2009年2月 木地貴雄氏が代表取締役社長に就任
2011年6月 太陽光発電事業を開始
2015年12月 Webシステムの開発を行うCuonを4億円で買収
2016年6月 and factoryと組んで旅館業法対応宿泊施設「HOSTEL APARTMENT」をオープン
2017年8月 第三者割当増資を実施し、4億2,500万円を調達
2018年2月 BIJからTRASTAに社名を変更
2019年4月 京都に「住亭」をオープン
2020年10月 TRASTAの全従業員を解雇、営業活動を停止
2021年6月 東京地裁から破産開始決定

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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