雅叙園、メルパルクも続々債務超過転落、ワタベウェディングは売却に動くか

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ブライダル国内大手のワタベウェディング<4696>がかつてない危機に瀕しています。3月19日に事業再生ADRで債務を圧縮し、経営再建を目指す方向で調整に入ったと報じられました。

2020年12月期で117億3,800万円の純損失(前年同期は7億500万円の黒字)を計上し、8億6,300万円の債務超過に転落しました。2004年に買収した目黒雅叙園(目黒区)が同時期に24億3,300万円の損失を計上、16億5,100万円の債務超過となっています。また、2008年に子会社化したメルパルク(港区)も同じく39億5,000万円の損失を計上して33億1,600万円の債務超過となりました。

ワタベウェディングは海外挙式への比重が高く、渡航制限がかかるために競合他社と比較しても業績の戻りに時間がかかります。それに加えて雅叙園とメルパルクが同時に債務超過となってしまい、売却も視野に入っていると考えられます。

しかし、土地・建物は第三者が所有しており、運営権だけを持つ子会社の売却は困難を極めそうです。

この記事では以下の情報が得られます。

・ワタベウェディングのビジネスモデルと事業展開
・ワタベ、雅叙園、メルパルクの業績推移
・子会社売却が難しい理由

メルパルクの債務超過額が総資産の1.8倍に

メルパルク東京
メルパルク東京(東京・港区)

ワタベウェディングは1953年に誕生した京都のワタベ衣裳店が前身の会社。1996年にワタベウェディングに名称変更し、1997年に大阪証券取引所2部に上場しました。ちなみにブライダル業界で初めて上場した会社です。ワタベウェディングの名を一躍世間に広めるきっかけとなったのが1973年のハワイ出店。結婚式と新婚旅行を兼ねたサービスを提供するようになりました。海外リゾート婚市場を切り開いた企業として知られています。

上場後はM&Aによる事業拡大にまい進しました。2004年に目黒雅叙園、2008年にメルパルクを買収しました。2017年にはハワイの映像制作会社を、2018年には千代田区の旅行会社も子会社化しています。

業績は比較的堅調に推移していましたが、コロナによる婚礼自粛の影響を大きく受けました。ワタベウェディングは売上のおよそ50%を海外などのリゾート挙式に依存しており、渡航制限のダメージが甚大でした。2020年12月期の売上高は同期間比61.1%減*の196億7,800万円となりました。リゾートウェディングの売上は82億9,800万円と前年同期比で63.1%も減少しています。

■ワタベウェディング業績推移(単位:百万円)

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2019年12月期* 2020年12月期
売上高 43,908 45,135 48,458 39,049 19,678
増減率 - 102.8% 107.4% 80.6% 50.4%**
純利益 124 171 218 705 ▲11,738
増減率 - 137.9% 127.5% 323.4% -
純資産 10,540 10,451 10,577 11,138 ▲863

*ワタベウェディングは2019年から決算期を3月から12月に変更しています。**増減率は決算期の数字をもとに算出したものです。

決算短信より筆者作成

ワタベウェディングは、保有する資産を次々と売却しました。京都や滋賀の賃貸用不動産を手放し、23億円を調達しています。また、海外挙式の一部エリアを閉鎖、国内販売店11店舗を撤退しました。2021年中盤から沖縄、後半は海外婚のマーケットが正常化すると予想しています。

しかし、事態は一刻の猶予も許されない状況です。子会社のメルパルクにおいては債務超過額が33億1,600万円となりました。実に総資産の1.8倍にも膨れ上がっているのです。

■目黒雅叙園業績推移(単位:百万円)

コロナ前の目黒雅叙園の総資産利益率(ROA)は、比較的安定して推移していました。

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2019年12月期 2020年12月期
純利益 165 288 286 280 ▲2,433
増減率 - 174.5% 99.3% 97.9% -
純資産 643 762 784 921 ▲1,651
総資産 2,738 3,664 4,308 4,138 3,827
ROA 6.0% 7.9% 6.6% 6.8% -

決算短信より筆者作成

雅叙園は2015年に本中野真氏を代表に迎えました。本中野氏はホテル日航東京の総支配人をしていた人物で、婚礼を軸にホテルの業績を上げたことで知られています。2017年に施設名を「ホテル雅叙園東京」に変更し、リブランドに着手していました。それが奏功して業績は堅調に推移していました。

■メルパルク業績推移(単位:百万円)

一方、11施設を運営するメルパルクはROAの振れ幅が大きくなっていました。

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2019年12月期 2020年12月期
純利益 194 28 235 27 ▲3,950
増減率 - 14.4% 839.3% 11.5% -
純資産 486 515 737 647 ▲3,316
総資産 2,756 2,610 2,869 2,545 1,810
ROA 7.0% 1.1% 8.2% 1.1% -

決算短信より筆者作成

メルパルクのホテルは老朽化が目立ち、リニューアル費用が嵩んでいました。2019年には婚礼客とトラブルが起こり、SNSで炎上。謝罪文を掲載する事態にまで発展し、婚礼客を取りにくい状況が続いていました。また、ホテル全体の従業員数は1,000人を超えています。雅叙園の倍以上。コロナで宿泊、婚礼の両方が稼働しない状況となって、損失額がいっきに膨らみました。

施設の老朽化が目立つメルパルク

1971年に誕生したメルパルク東京
1971年に誕生したメルパルク東京

困難を極めそうな子会社売却

これほどの危機に見舞われたのであれば、藤田観光<9722>が太閤園を売却したように子会社を売りに出せば良いと思うかもしれません。

しかし、雅叙園の土地と建物は米投資ファンドのラサール・インベストメント・マネージメントが組成した特別目的会社が所有しており、メルパルクの物件は日本郵政<6178>のものです。ワタベウェディングは施設の運営権を持っているだけ。ホテル・結婚式場業界の先行きが不透明な中で、施設運営の子会社を売却するのは困難を極めます。ましてや、二社ともに債務超過に陥ってしまったのです。

ワタベウェディングは、通販カタログの千趣会<8165>が25.99%の株式を保有する持分法適用会社です。千趣会も2020年12月期で39億4,600万円の純損失(前年同期は81億8,200万円の黒字)を計上しており、コロナ禍の苦境にあえいでいます。

自己資本比率を50%に保っているとはいえ、簡単にワタベウェディングの増資に応じられる状況にありません。経営再建には特に債務超過額の大きいメルパルクの整理や再編が必須になると考えられます。

千趣会が最終的にワタベウェディングを救済するにしても、不採算事業や子会社の整理、業績回復に向けた具体的な事業再生計画が必須になるものと考えられます。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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