日本政策金融公庫の調査月報2月号に、製品開発サポートや事業承継コンサルティングを手がける千年治商店(兵庫県芦屋市)の山野千枝代表取締役が「家業承継の新たな視点ー注目高まるベンチャー型事業承継ー」を寄稿している。

山野氏は「会社が存続していくうえで、選択と集中をするための部門売却や、強みを伸ばしていくための買収、サプライチェーンを維持するための垂直統合など、M&Aが必要な局面はあると考える」とする。

そのうえで「後継者がいない会社は売ってしまえばよいとう安易な決断を煽るような潮流には一石を投じたい。M&Aは最後の最後の手段として否定はしないが、一時的な合理性を追求して、社風や文化以上に、電卓ではじけるスペックだけでマッチングするM&Aが、最良の解決策とはとても思えない」とし、解決策の一つとしてベンチャー型事業承継について言及している。

ベンチャー型事業承継は若手後継者が先代から受け継ぐ有形·無形の経営資源をベースに、リスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場参入など、新たな領域に挑戦することを指す。

山野氏は論文で2018年6月にベンチャー経営者らとともに設立した「一般社団法人ベンチャー型事業承継」の取り組みを紹介しつつ「存続力は競争力」「若い世代の継ぐイメージを変える」「事業承継政策の課題」「起業家、アトツギがみせる世界の違い」などの見出しで持論を展開している。

そして「バブルがはじけ、厳しい経営環境に転じた時代を生き抜い経営者は新しいことに挑戦を続けなければ、生き残れないことを誰よりも知っている。私が取り組んでいる34歳未満のアトツギが対象のベンチャー教育プログラムや新規事業開発イベントに子どもを送り込んでくる親は50~60歳代だ。これが10年前の30歳と60歳の親子なら事情が違ったはずだ。今の時代に生きるアトツギ世代、先代世代だからこそ、ベンチャー型事業承継を実現できると信じている」と結んでいる。

【山野千枝氏】1991年関西学院大学卒業。広告制作会社を経営するほか、大阪市経済戦略局の中小企業支援政策に参画。関西大学非常勤講師として「ガチンコ後継者ゼミ」の講座を担当する。

文:M&A Online編集部