2019年11月13日、大手通販会社のパンフレットやカタログなどの印刷を手がけていた千明社(東京都千代田区)が東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、約30億円の負債を抱えて事実上倒産した。

同社は1950年7月の創業。資本金 6600万円で、従業員数は230人(うちパート社員50人)。企画からデザイン、印刷、製本加工まで一貫して対応できるのが強みで、1988年に埼玉県幸手市でオフセット輪転工場を開設、2012年には沖縄県うるま市にDTPセンターを新設するなど印刷能力を高めてきた。

「デジタル化」に対応したが、変化が激しすぎた

ところが大手通販会社の販売スタイルが、パンフレットやカタログの送付からウェブショッピングへシフトして印刷需要が減少。さらに当の大手通販会社もアマゾンや楽天<4755>などのネット通販専業業者に押されて業績が悪化している。この影響で印刷事業の売り上げが落ち込んでいた。しかし、同社はデジタル化に背を向けていたわけではない。

千明社はAR(拡張現実)を利用した広告媒体の「ARAR(あるあ~る)」や、クーポン、スタンプ、告知機能などを備えた販促アプリ「CriCru(クリクル)」、電子書籍の受託制作といったデジタルサービスを積極的に展開。デジタル化に対応しようとしたが軌道に乗れなかった。最近は所有不動産の売却などでしのいできたが、業績回復の兆しが見えないことから自力再建を断念したという。

カラーのオフセット製版ではコンピューター製版の「トータルスキャナー」を業界に先駆けて導入し、当時は非常に高価だった米アップルのコンピューター「マッキントッシュ」をずらりとそろえたDTP・デザイン部門を新設するなど、千明社は紙印刷工程でのデジタル化の波に乗って成長した。が、皮肉にもその波が「紙」を乗り越えて、ディスプレー内の「バーチャル(仮想)空間」でコンテンツが完結する時代を生き残ることはできなかった。

文:M&A Online編集部