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【資本効率革命の波5-4】従業員の株主化を推進しよう(1)
日本の企業では従業員株主を拡大する余地が十分に残っています。従業員株主は企業にとって安定的な長期保有の株主であると同時に、企業のROE向上あるいは株価上昇という株主の期待する方向と同じベクトルを有することになるのです。
2016年3月末の時点で、従業員の持株会への拠出金に対し企業側から一定の奨励金を支給している企業は、従業員持株制度を有する企業3123社の96.7%にあたる3019社で、平均支給額は拠出金1000円に対し80.04円だそうです。50円支給の企業で計1304社、次に多いのは100円支給の995社です。200円以上支給している企業も137社に上っています。
この奨励金額は徐々に増えていますが、まだまだ不十分な額といわざるを得ません。
従業員株主の拡大のためにはまずこの奨励金の増額から始められてはいかがでしょうか。
1000円の従業員拠出に対し、企業から100円の奨励金支給は、企業が従業員に対し将来の株価下落リスクを10%まで負担してくれるのと同じですから、一般の投資に比べて極めて有利な投資条件だということを従業員によくPRして理解してもらう努力が必要です。
この奨励金増額の施策と同時に、従業員個人の保有株式の一部引き出しの条件緩和や、定期的な従業員向けIR説明会実施などの工夫も必要かもしれません。
いずれにせよ、従業員の株主化は企業にとっては敵対的買収リスクの軽減と同時に社内一体感の醸成に貢献し、従業員にとっては業績の改善=ROE向上が第三者株主だけでなく従業員株主である自分たちとってもプラスになるということを理解していただき、さらなる加速のための施策を実施していただきたいと願っています。
文:クロス・ボーダー・ブリッジ株式会社 代表取締役 藤原裕
経歴: 1974年 東京大学工学部資源開発工学科を卒業 1974年 三井海洋開発(株)入社、海洋石油掘削装置(リグ)の開発およびマーケッティングに従事 1987年 安田信託銀行(株)入社、M&Aコンサルティングチーム統括、同社ニューヨーク副支店長、シカゴ支店長歴任 1998年 オムロン(株)入社、米国子会社社長、本社財務IR室長、執行役員常務・グループ戦略室長、同・経営IR室長歴任 2011年 オムロン(株)退社 2011年 クロス・ボーダー・ブリッジ(株)設立、代表取締役に就任(現任) 2013年 ナブテスコ(株)社外取締役に就任(現任) HPはこちらから http://cross-border-bridge.com/index.html
日本の企業では従業員株主を拡大する余地が十分に残っています。従業員株主は企業にとって安定的な長期保有の株主であると同時に、企業のROE向上あるいは株価上昇という株主の期待する方向と同じベクトルを有することになるのです。