閑話休題(1)株主資本、自己資本と純資産

このコラムでは株主資本という呼び方で統一していますが、2006年の新会社法の施行後、バランスシートの資本(純資産)の部の表記が変更になりました。
以前は株主資本、自己資本、純資産は全て同一のものとして扱われていましたが、新会社法のもとでは上の表のように区別されています。
ROEの計算で分母として上の3つのどれを使うかですが、株主に帰属する資本という点に着目すれば、自己資本が正しいと思います。しかしこの自己資本には土地や有価証券の評価差額が含まれていますが、一方で計算式の分子である当期純利益には有価証券や土地の評価差額は含まれていません。つまり分子と分母が整合していないのです。
個人的には分子と分母の整合を図って、株主資本を分母とすべきと思います。
ただし有価証券報告書などの適時開示書類の計算式ガイドラインでは、分子と分母の整合性には目をつぶって、自己資本を使うように指示されているようです。
また、純資産は新株予約権者と少数株主など当社の株主でない人の持ち分も含んでいるため、これをROEの計算式には使えません。
ところで筆者は株主の持ち分を自己資本という呼び方は誤解を招きやすいのでないかと思っています。株主資本に対して自己資本と呼ぶのは、株主以外の誰か他の人に帰属する資本のように聞こえてしまうからです。
帰属先を明確にするためにも自己資本も含めて株主資本という呼び方に統一すべきではないかなと思っています。
例えば株主資本=狭義株主資本、自己資本=広義株主資本というように。
文:クロス・ボーダー・ブリッジ株式会社 代表取締役 藤原裕
【バックナンバー】連載コラムを読みたい方は、こちらから
2020-09-28
2019年1月に発行した「資本コスト」入門の改定版で、新たに海外案件の場合の資本コストの取り扱いや、外国人の目に映る株主総会、M&Aが増加している背景、株主総利回り(TSR)などを追加した。