5-4 従業員の株主化を推進しよう(1)

資本効率化経営の成果がROE向上に結び付き、その結果が株価上昇となって株主に還元されるという仕組みのなかで、その中の主要なステークホールダー(利害関係者)である従業員、経営陣と株主がそれぞれWin-Winの関係を築いていくことが、この仕組みを継続させていくための鍵だと思います。そのステークホールダーの誰かを犠牲にして成し遂げるROE目標はおそらく短期間で破たんするでしょう。

その仕掛けが前頁までに述べた従業員と経営陣のROICとROEに連動するインセンティブ報酬制度ですが、さらに推し進めて従業員の株主化促進を強く推奨します。

従業員を企業の損益計算書の中で人件費というコストの扱いにとどめず、その従業員の働きの最終成果である当期純利益(株主への帰属分)の一部も株主としての従業員に還元しようという仕組みです。
それがための最も有効な方法は従業員持ち株会です。

東京証券取引所の調査によれば2016年3月現在、東証上場の国内企業3508社のうち従業員持ち株制度を有する企業は3123社。その3123社の時価総額は482.6兆円で、持株会が保有する自社株の総額は時価総額の0.97%にあたる約4.7兆円です。つまり全国平均では持株会はその企業の約1%弱の株式を保有していることになっています。しかしこの数字は米国などに比較すると極めて低い数字です。言い換えれば、日本の企業では従業員株主を拡大する余地が十分に残っているということもできます。

従業員株主は企業にとって安定的な長期保有の株主であると同時に、企業のROE向上あるいは株価上昇という株主の期待する方向と同じベクトルを有することになるのです。

文:クロス・ボーダー・ブリッジ株式会社 代表取締役 藤原裕

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