3-11 対外公表はROEだけ、ROICは社内用

ROIC経営を導入されている企業もだんだん増えてきました。

これは喜ばしいことですが、全社ROE目標の他に全社ROICの目標値まで対外公表されている企業がちらほら見受けられます。これには賛成できません。なぜならROE優先なのか、ROIC優先なのか、誰に何を訴求したいのか、メッセージを受け取る側を混乱させるからです。

前頁でも触れましたが、投下資本が一定のもとではROIC目標はROE目標が決まればあとは有利子負債の割合によって決まってきます。ROEとROICの目標を両方開示する企業は、有利子負債の割合を固定してしまっているのです

このような固定的な資本施策では、ROE目標達成が遠のいてしまいます。上の左のグラフは前掲3-7で示したように、例え予想利益が計画値から落ち込んだとしても、株主資本の一部を負債で肩代わりすることにより、ROE目標8%が維持されるというシナリオです。

右のグラフは5~6%の低いROEの会社でも、利益増大だけに頼ることなく、利益はほぼ一定でも有利子負債の有効活用により、8%以上のROE達成も可能なるというシナリオを表しています。

いずれの場合も目標とするROICはROE目標から大きくかい離しますが、株主や投資家は加重平均値であるROICではなくROEが唯一の興味の対象であり、逆に銀行など債権者は高いROEよりも最低限の契約金利1%程度をカバーできるROICであればそれでまずは安心のはずです。

つまりROICは対外的にはあまり意味を持たず、社内向けには柔軟に変化させる指標なのです。重要なのは、負債過大にならない範囲で低コストの有利子負債を活用して、社内で目標とするROICを低減し事業部門の採算ハードルを下げると同時に、株主には約束したROEを維持するという、柔軟で効率的な最適資本構成を目指す経営です。

文:クロス・ボーダー・ブリッジ株式会社 代表取締役 藤原裕

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