「ROEより大切なもの」守れますか?
「ROEなんて欲張りな株主の過大な要求に過ぎない。我が社にはもっと大事なものがある。それは世の中に役に立つ商品やサービスを提供し続けること、そして従業員の雇用を守ることである」ROEの低さを指摘された社長の典型的な反論です。
確かに株主は強欲です、また世の役に立つ企業でありたい、従業員の生活も守りたいという社長の思いも理解できます。
しかし株式市場に上場して、不特定多数の投資家を株主として企業の利害関係者の仲間に引き入れた以上、株主の要求は無視できないものになっているのです。ましてや株主は社長を含めた取締役再任議案の議決権を有しています。万一再任議案が否決されてしまえば、社長のビジョンも従業員に対する思いも実現できません。
また低いROEは株価の低迷という結果につながり、最終的には敵対的買収の標的となってしまうリスクを増大してしまいます。
ニッセイ基礎研究所の調査レポートによれば、ROE8%を超えた企業の株価はその後のROE向上とともに上昇していくけれども、8%未満の企業の株価はPBR(株価株主資本倍率)1倍のレベルで低迷してしまうとのことです。
つまりROE8%未満の企業は投資家の要求水準に達しておらず、その株価は企業の解散価値に等しいPBR1倍あるいはそれ以下におちこんでしまうのです。
そうなれば格好の買収対象企業です。
買収されれば、社長だけでなく従業員の雇用も世の中に役立つ商品やサービスの提供という大切なものも継続できないかもしれません。
まずはROEで合格点を取ることが企業の存続の最低条件ではないでしょうか。
文:クロス・ボーダー・ブリッジ株式会社 代表取締役 藤原裕