シナジーを「メイン」と「サブ」に区別

本来M&Aは、自社の経営戦略を実現する上での手段であり、その実現のためには、買収後に被買収企業と摩擦や痛みが生じるものである。それが“コラボレーション”に甘んじてしまうと、結局、短期的かつ表面的な効果しか出ず、本来のM&Aの目的が達成されなくなってしまう。これは大問題だ。

そこで、「シナジー」を「M&Aで狙う主要効果」と「M&Aの副次的効果」に区別して呼ぶことをおすすめしたい。簡単に言えば、「メインシナジー」と「サブシナジー」だ。

「メインシナジー」とは、まさにM&Aの目的である。バリューチェーンの補強や事業ポートフォリオの再編など、自力では実現困難な効果をいう。一方、「サブシナジー」とはM&Aの主目的ではないが、統合すると付随的に得られる効果、要はオマケである。例えば、主要効果が関東エリアの販路獲得による売上向上だった場合、副次的効果としては関東の営業拠点集約によるコスト削減などが挙げられる。

根拠の薄いシナジーを排除する

「シナジー」を区別して呼ぶことによる効用としては、まず創出すべき必須シナジーが明確になり、買収検討時に根拠の薄いシナジーを排除できるという点だ。また、ポストM&Aにおいて、何のシナジー創出にリソースを最も割くべきなのか優先順位が明確になる。

つまり、「シナジー」を正確に定義することで、それがM&Aの目的をよりクリアに浮かび上がらせ、ポストM&Aにおいても、やるべきことが明確になるのだ。言葉が人を動かす。ならば、言葉を正確に捉えることが肝要だ。

さて、皆さんの会社のM&Aにおいて、メインシナジーとサブシナジーを区別することができるだろうか? もし、即答できなければ、それは「シナジー」というマジックワードに惑わされているということなのかもしれない。

文:経営コンサルタント、MAVIS PARTNERS代表 田中 大貴