1株当たり純資産を下回るTOB価格をスクイーズアウトの「公正な価格」と認めた例
今回は、1株当たり純資産を下回る価格によるTOB及びその後のスクイーズアウトに関する裁判例を紹介します。
みなし配当の計算を規定する法人税法施行令の定めを一部無効と判断した、東京地裁平成 29 年12月6日判決(判例集未掲載)(以下「本判決」といいます。)についてご紹介します。なお、本判決では原告(納税者)が勝訴しましたが、被告(国)が控訴し、2018年7月31日現在東京高等裁判所に係属しています。以下では、まず配当・みなし配当に関する現行法の規定と実務上の論点を紹介し、その後本判決の内容をご説明します。
法人税法上、内国法人が他の内国法人から支払いを受ける「剰余金の配当等」については、以下のとおり、持株割合等に応じて配当等の全部又は一部が益金に算入されない(課税されない)ものとされています(法人税法 23 条第 1 項各号)。
①完全子法人株式等(保有割合が 100%) 100%
②関連法人株式等(保有割合が 1/3 超 100%未満) 100%
(但し、いわゆる負債利子控除の額がある場合には、それを控除した額)
③その他の株式等(保有割合が5%超 1/3 以下) 50%
④被支配目的株式等(保有割合が5%以下) 20%
このように内国法人の受取配当の全部又は一部が益金不算入とされているのは、「法人の受取配当等に対しては支払法人の段階ですでに法人税が課されているから、法人所得に対し何回も重複して課税することを避けるためには、受取法人の段階でそれを法人税の対象から除外する必要があるため」とされています。
なお、ここでの「剰余金の配当等」からは「資本剰余金の額の減少に伴うもの」が除かれており、「剰余金の配当等」のうち「資本剰余金の額の減少に伴うもの」については、下記 3.のみなし配当に関する規定が適用されることとなります。
内国法人が外国法人から受け取る「剰余金の配当等」については、上記 1.の益金不算入制度の対象外であり、外国子会社等(原則として内国法人による持分割合が 25%上である状態が配当等の支払義務が確定する日以前 6カ月前から継続している外国法人)から受け取る配当等について、その 95%が益金不算入とされ(法人税法 23条の2 第1項)、その他の配当等については 100%益金算入とされています。なお、上記 1.同様、「剰余金の配当等」からは「資本剰余金の額の減少に伴うもの」が除かれています。
この 95%益金不算入の制度は、外国子会社から受ける配当に対する二重課税を排除するとともに、海外市場で外国子会社が獲得する利益を我が国に還流させることを目的としています。
今回は、1株当たり純資産を下回る価格によるTOB及びその後のスクイーズアウトに関する裁判例を紹介します。
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