1株当たり純資産を下回るTOB価格をスクイーズアウトの「公正な価格」と認めた例
今回は、1株当たり純資産を下回る価格によるTOB及びその後のスクイーズアウトに関する裁判例を紹介します。
本件は、図表 4 の事実関係の下で、内国法人 X 社がその 100%子会社である外国法人A 社(米国法人(LLC))から受けた資本の払戻し(以下「本件資本配当」といいます。)と利益分配(以下「本件利益配当」といいます。)の税務上の取扱いが問題となった事案です。
図表 4 事案の概要
X社は、本件資本配当と本件利益配当とを別個の配当として取り扱いました。そのうえで、A 社の簿価純資産額が資本金等の額を下回っていた(税務上の利益積立金がマイナスであった)ことから①本件資本配当については、計算の結果みなし配当は 0 であり 1 億米ドル全額が株式譲渡対価であるとして、1 億 6220 万米ドル(約 129 億円)の譲渡損失を認識し、②本件利益配当については上記Ⅰ.2.の外国子会社等受取配当益金不算入を適用して 95%を益金不算入としました。
これに対し、税務当局は、各配当の全額が「資本の払戻し」に該当するものとして、本件の取引から約 400 万円の譲渡損失しか生じないとして、X 社の税務処理を否認する更正処分を行いました。
本件の争点は、本件資本配当及び本件利益配当に対してみなし配当の規定をどのように適用するか、というものであり、本件資本配当と本件利益配当を 1 つの配当と取り扱ってみなし配当規定を適用してよいか(争点①)、1 つの配当とみる場合に上記のA 説とB 説のいずれが妥当であるか(争点②)、等が争われました。
今回は、1株当たり純資産を下回る価格によるTOB及びその後のスクイーズアウトに関する裁判例を紹介します。
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