金商法166条1項5号にいう「職務に関し知った」の意義について示した裁判例

 2017年6月29日、東京高裁は、証券会社A社の従業員Bが認識していた「C社が株式の募集を行うことについての決定をした」旨の事実(「本件重要事実」)について、XがBから当該事実の伝達を受けたにもかかわらず、C社の株式の売付けを行ったとして、処分行政庁がXに対して行った課徴金納付命令決定について、Xが、Bは本件重要事実を「その職務に関し知った」とは認められないこと等を理由として、当該決定の取消しを求めた事案について、「職務に関し知った」の意義について示した上で、同決定を取り消す旨の判決を行いました。

 当該事案における主要な争点は、Bが本件重要事実を「職務に関し知った」といえるかという点でした。この点について、東京高裁は、「職務に関し知った」といえるためには、「その職務に関し重要事実を構成する主要な事実を単に認識したというだけでは足りず、その者を会社関係者と位置付けることを正当化する状況、すなわち、その方法や態様等を問わないものの、当該契約の締結若しくはその交渉をする役員等が知った重要事実が法人内部においてその者に伝播したもの(流れて、伝わったもの)と評価することができる状況のもとで重要事実を構成する主要な事実を認識した場合であることを要する」との判断を示した上で、本件においては、C社との間で引受契約の交渉を担当していたA社の他部門からBに対して本件重要事実が伝播したことを認めるに足りる証拠はなく、BがXに対して伝えた株式の募集の事実はBが営業員として推測した事実にすぎないこと等を理由に、Bが本件重要事実を「職務に関し知った」とはいえず、処分行政庁が行った課徴金納付命令決定は違法であるとの判断を示しました。

 本東京高裁判決は、金商法166条1項5号にいう「職務に関し知った」の意義を明らかにし、また、処分行政庁の課徴金納付命令が裁判所により取り消された初めての事例であり、今後のM&A実務においても参考になるものと思われます。

パートナー 大石 篤史
アソシエイト 坂㞍 健輔

文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2017年11月号Vol.47より転載