最高裁は、本年7月17日、デラウェア州の改正統一リミテッド・パートナーシップ法(「州LPS法」)を準拠法として組成されたLPSが我が国の租税法上の「法人」に該当すると判断しました(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/219/08...)。本件では、日本の複数の納税者が、州LPS法に準拠してLPSを組成し(「本件LPS」)、本件LPS名義で中古不動産を取得して行った不動産賃貸事業から生じた減価償却費等の損失を、他の所得と損益通算したところ、税務当局側が本件LPSは「法人」に該当することを理由として、発生した損失は本件LPSの損失であり、分配された収益は配当所得であるとして当該損益通算を認めなかった事案です。
東京、大阪、名古屋の各高裁レベルでは判断が割れていたものの、最高裁は、外国法に基づいて設立された事業体が「法人」に該当するか否かを判断するに当たっては、①当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、我が国の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討すべきであり、それができない場合には、②当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討すべきとして、「法人」該当性について判断基準を示し、本件LPSは「法人」に該当すると判示しました。
これは外国法に基づく事業体の性質決定を判断した初の最高裁判決であり、実務に与える影響は非常に大きいと思われます。外国ファンドを通じた投資を行う場合、当該外国ファンドが法人であるかどうかによって、投資家の税効果が全く異なるため、今後の実務においては、同判決の射程を見極めたうえで、慎重に当該ファンドの性質を検討する必要があります。
なお、最高裁は、同日付で、英国領バミューダ諸島法上のLPSは、「法人」に該当しないとする高裁判決を維持しています。
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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2015年8月号Vol.20より転載