2016 年7月20日、東京高裁は、不動産事業を営むA 社が環境事業のベンチャー企業であるB 社の株式を取得したことに関し、A社の株主らが、当該株式取得時の取締役及び監査役らに対して、善管注意義務違反があった等として会社に対する損害賠償を求めた株主代表訴訟において、株主らによる控訴を棄却し、第一審と同様に、被告役員らの善管注意義務違反を否定する旨の判決を言い渡しました。

第一審では、経営判断の原則に基づく判断基準を採用した上で取締役の判断は不合理ではないと判示されたところ、控訴審においては、原告株主らから、経営判断の原則に基づき取締役の裁量を判断するとしても、本業と関連性の低い純然たる投資について取締役に認められる裁量は限定的なものとなるとの主張がなされていました。これに対し、東京高裁は、経営判断の原則に基づく判断基準を採用した上で、異業種の事業の会社の株式を取得する場合であっても、事業の採算性や将来性のほか、既存の事業との関連性や事業内容を多角化させる必要性等、多様な要素を考慮に入れて、会社全体の運営のために限られた時間内で専門的知識経験及び政策的配慮に基づいて判断を下すことになるため、基本的には既存の事業活動に関する経営判断の場合と同様に、広い裁量が認められるべきものであるとの判断を示しました。

本判決は、事例判断ではあるものの、事業会社による異業種の会社の株式取得に関する取締役の判断においても、経営判断の原則に基づく既存事業と同様の判断基準が適用されることを示したものとして、実務上参考になると思われます。

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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2016年10月号Vol.34より転載

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