譲渡制限株式の売買価格決定に関する裁判例(非流動性ディスカウントを認めた事例)

 東京高裁は、2017年1月26日、譲渡制限株式の発行会社が、株式取得者からの譲渡承認請求に対して、その株式の取得を承認せずに自ら買い取ることとして、会社法144条2項に基づく売買価格の決定の申立てを行った事案において、原決定が、収益還元法による算定で株式に市場性がないことを理由とした減価(「非流動性ディスカウント」)を行わなかった鑑定に基づき売買価格を定めたのに対して、一定割合の非流動性ディスカウントを認めた売買価格とする旨の決定を行いました。

 既に2015年3月26日最高裁決定(「2015年最高裁決定」)では、非上場会社の組織再編の場面において会社法785条1項に基づく反対株主の株式買取請求がなされ、裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に、非流動性ディスカウントを行うことはできない旨の決定がなされていました。

 本決定においては、非上場会社の組織再編の場面においては持分割合に相当する企業価値の分配を保障するための株式買取請求権が反対株主に付与されているのに対し、会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格決定は、①譲渡承認が不承認とされた場合に会社又は指定買取人に買取請求をするか否かは譲渡承認請求者の選択に委ねられており、株式の継続保有も可能であること、②新たに譲渡制限を設ける定款変更が行われる際の反対株主には「公正な価格」による買取請求権が付与されているのに対し、会社法144条2項では「売買価格の決定」と定められているにすぎないこと等に照らせば、2015年最高裁決定の射程は譲渡制限株式の売買価格決定には及ばないとしました。

 その上で、組織再編の際の反対株主による株式買取請求の場面と異なり、譲渡制限株式の取引の場面では、上場株式と比較して流動性が低いために換金時に追加的コストが生じ、これを前提として当事者間で任意に取引がされているのが通常であることからすると、収益還元法による株式の売買価格の評価を行う場合であっても、上記追加的コストを株式の評価に反映することには一定の合理性があるとして、15%の非流動性ディスカウントを行った金額を売買価格とする旨の決定を行いました。

 本決定は、2015年最高裁決定の射程が会社法144条2項による譲渡制限株式の売買価格の決定には及ばないものとし、当該事実関係の下で非流動性ディスカウントを株式評価に反映した点で意義があるものと思われ、譲渡制限株式の取引の場面における株式評価の実務に与える影響は小さくないものと考えられます。

弁護士 大石 篤史
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弁護士 徳田 安崇
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文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2017年5月号 Vol.41より転載