2016年7月6日、東京高裁は、株式交換により完全子会社となる会社の株主が、株式交換に反対して株式買取請求を行ったものの、効力発生日から30日以内に株式の価格の協議が調わず、かつ、60日以内に価格決定の申立てがなされなかったために、かかる株式買取請求を撤回した上で(会社法786条3項)、完全親会社となった会社の株式の引渡し等を請求した事案において、以下のとおり株式買取請求の撤回の効果について判示しました。
すなわち、株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には、完全子会社には原状回復義務として完全子会社の株式を返還する義務が生ずるものの、株式交換の効力発生日には株式買取請求に係る株式も含めて完全親会社が完全子会社の株式をすべて取得している状態となっていることから、当該原状回復義務は履行不能となっており、結局、完全子会社は、株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭の返還義務を負うことになるとした原審の判断を是認しました。その上で、当該返還義務を負う金額については、株式買取請求の撤回時を基準として算定すべきとした原審と異なり、株式が返還不能となった株式交換の効力発生日を基準とした株式の価格相当額(実際には、株式交換の効力発生日に最も近い、完全子会社の株式の市場取引最終日の終値をベースに算定されています。)を返還すべきと判示しました。
本判決は、株式買取請求の撤回の効果に関して判示した初めての高裁裁判例と思われ、組織再編を伴うM&Aを行うにあたっては参考になると思われます。
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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2016年12月号Vol.36より転載