2016年1月28日、東京地裁は、株式交換により完全子会社となる会社の株主が、株式交換に反対して株式買取請求を行ったものの、効力発生日から30日以内に株式の価格の協議が調わず、かつ、60日以内に価格決定の申立てがなされなかったために、かかる株式買取請求を撤回した上で(会社法786条3項)、①完全親会社となった会社の株式の引渡し等を請求し、また、②予備的に完全子会社の株主の地位にあることの確認等を求めた事案において、以下のとおり株式買取請求の撤回の効果について判示しました。
すなわち、株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には、完全子会社には原状回復義務として完全子会社の株式を返還する義務が生ずるものの、効力発生日には株式買取請求に係る株式も含めて完全親会社が完全子会社の株式をすべて取得している状態となっていることから、当該原状回復義務は履行不能となっており、結局、完全子会社は、株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭の返還義務を負うことになるとして、完全親会社又は完全子会社の株主の地位にあることを前提とした原告株主らの請求を退けました。
上記判決は、株式買取請求の撤回の効果に関して、撤回によっても株式交換前又は後の株式の引渡しを受けることはできず、撤回前と同様に金銭を受け取る権利を有するにとどまる旨を判示した裁判例として参考になると思われます。
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文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2016年6月号 Vol.30より転載